組織内の意思疎通に問題か 習氏、気球打ち上げ関知せず―中国

東京, 2月11日, /AJMEDIA/

中国から米国に飛来した気球を巡り、米政府高官は9日、「習近平国家主席も関知していなかった」との見立てを明らかにした。昨年10月に中国共産党総書記として3期目に入り、「一強」体制をさらに固めた習氏だが、専門家の間では、組織内の意思疎通が十分でなく、今回の騒動につながったとの見方が出ている。
 中国共産党に詳しい神戸大大学院講師で日本国際問題研究所の李昊研究員は「中国では権力が一点に集中する半面、トップに届く情報は限られざるを得ない。大量の情報を全て習氏に報告するわけにもいかず、下の人間にとっての取捨選択は非常に難しい」と指摘する。
 政治指導部と軍部の意思疎通を巡っては、2011年、当時の胡錦濤国家主席とゲーツ米国務長官の会談時に行われたステルス戦闘機の試験飛行を、胡氏が事前に把握していなかったというエピソードがある。07年の衛星破壊実験も知らなかった可能性が取り沙汰され、政治による軍の統制が不十分なのではないかという懸念が浮上した。今回の気球の飛行には、サイバーや電子戦を担う軍の戦略支援部隊が関わっていたとみられている。
 李氏によると、習政権下では、軍内の対米強硬派が指導部の意向を無視して単独行動を起こす事態は想定しにくい。軍が何らかのデータ収集目的で放った気球の存在が、上層部に周知されていなかったとみられ、そこに「深い思惑」はなかったと李氏は分析する。
 一方、別の中国の有識者は「中米関係が改善し、国防予算の割り当てが減る展開を嫌った軍が独自に動いた可能性は残る。ただ、今回の件を把握していなかった習氏が軍の『失態』と見なしていることは間違いない」と話した。

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