死刑の重み、問われた自覚 「遺族踏みにじる」「あきれた」―「はんこ」発言で葉梨法相辞任

東京, 11月12日, /AJMEDIA/

「死刑のはんこを押すときだけニュースになる地味な役職」などと発言した葉梨康弘法相が11日、辞任した。今も事件を問い続ける犯罪被害者、やむにやまれず死刑を求める遺族がいる中で飛び出した発言。「気持ちを踏みにじる」との批判が相次いだほか、死刑制度に反対する団体からも「あきれた」と声が上がった。問われたのは、死刑執行を最終判断する職責への自覚だ。
 東京・秋葉原で2008年、7人が無差別に殺害され10人が負傷した事件では、元派遣社員加藤智大死刑囚の刑が今年7月に執行された。タクシー運転手として現場に居合わせ、右脇腹を刺された湯浅洋さん(68)は「自分も当時、法廷で死刑を望んだが、事件を起こさなければ、どんな人間になっていたか今も考える」と語り、事件と向き合い続ける。「はんこを押すだけかもしれないが、加藤元死刑囚のような人が出ない社会をつくることも法相の仕事ではないのか」と問い掛けた。
 加藤元死刑囚の元同僚で事件後、被害者らと対話を続けてきた大友秀逸さん(46)は「遺族や被害者の言葉を聞き、死刑執行を待ち続ける重たい処罰感情を理解すれば、軽い発言はできない。被害者たちともっと向き合ってほしい」と求めた。
 犯罪被害者支援弁護士フォーラムの事務局長を務める高橋正人弁護士は「遺族は一番大切な娘さん、息子さんを返してほしいが、できないからこそ最低限の償いとして、やむを得ず死刑を望んでいる。その気持ちを踏みにじるものだ」と代弁する。続投ならパフォーマンスで刑を執行したと受け取られかねないとし、「遺族の気持ちと全く違うし、制度そのものの存続が危うくなっていた」と指摘した。
 死刑制度の廃止を求める国際NGOアムネスティ・インターナショナル日本の中川英明事務局長は「あきれた」と言う。「制度を維持するのであれば慎重な運用が必要。簡単に考えてもらっては困る」と苦言を呈した。

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