安全性の確保が課題 原発「60年超」運転、先例なし

東京, 3 月1 日, /AJMEDIA/

政府が28日に閣議決定した「GX脱炭素電源法案」で道を開こうとしている既存原発の「60年超」運転では、安全性の確保が課題となる。実際に60年を超えて稼働している原発は世界で例がない。国会審議で安全性の懸念を払拭(ふっしょく)できるかが問われる。
これまで原子炉等規制法(炉規法)は運転期間の上限を「原則40年、最長60年」と定めてきた。しかし、経済産業省は「40年は一つの目安で科学的根拠はない」との見解を示す。海外の多くの国でも上限は設けられていないという。
 安全審査を担う原子力規制委員会は運転期間について「原子力の『利用』の在り方に関する政策判断で、規制委が意見を述べる事項ではない」との立場を維持。このため今回の法案では運転期間の規定を炉規法から削除し、原子力を利用する経産省が所管する電気事業法に規定を新設した。
 60年超運転は、安全審査などによる稼働停止期間を算入しないことで可能となる。停止期間中は放射線による原子炉の損傷はほぼないとされるが、コンクリートや配線などの経年劣化は進む。規制委で炉規法改正案に反対した石渡明委員は「この変更は科学的・技術的な新たな知見に基づくものではない」と非難した。
 それでも経産省が電事法を改正して60年超運転を目指す背景には、電力の安定供給確保に不可欠との判断がある。国内の建設中を含む36基の原発がすべて60年運転したとしても、2060年には稼働原発は8基に減る。
 現行の運転期間ルールは、12年に当時の与党・民主党と野党の自民・公明両党が合意して定めた。立憲民主党の枝野幸男前代表は2月15日の衆院予算委員会で「原子炉の中は(一度稼働すれば)見られない、触れられない。外からの安全性の確認は限定される」と指摘。長期運転に対する技術的な知見が乏しい中、政府には安全性を担保する根拠が求められる。

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