台湾で応酬も透ける本音 意思疎通の維持重視―米中国防相

東京, 6月12日, /AJMEDIA/

バイデン米政権の発足後、対面では初となった10日の米中国防相会談で、オースティン米国防長官と中国の魏鳳和国務委員兼国防相は台湾問題をめぐり、激しい応酬を繰り広げた。一方で対話を維持する重要性でも一致。双方の発言からは、対決姿勢を維持しつつ衝突を避けたいという本音も透けて見える。
 「極めて、極めて重要な対話だ」。オースティン氏は11日、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(通称シャングリラ会合)で演説し、中国軍上層部との「意思疎通の手段」確保が衝突回避に必要だと訴えた。
 米中の競争が激化する中、中国は空軍力強化を進め、台湾の防空識別圏に戦闘機などを進入させて威嚇している。バイデン大統領と習近平国家主席は昨年11月のオンライン首脳会談で、国防トップの会談開催で合意。偶発的衝突の回避など、危機管理の枠組み構築を目指しているとみられる。
 バイデン政権はロシアが侵攻を続けるウクライナ情勢への対応に追われ、重視するインド太平洋地域への関与が制約されている。対中で厳しい姿勢の米議会にも配慮して圧力を強めているものの、衝突は回避したい考えだ。
 国防相会談にこぎ着けたとはいえ、米側が希望していたとされる中国軍制服組トップの許其亮・中央軍事委員会副主席とオースティン氏との会談は実現していない。オースティン氏が「極めて」と力を込めたのは、魏氏より序列が上の許氏との会談を中国側に迫る狙いがあったようだ。
 国防相会談では、中国側も米国を強く威嚇した。中国メディアによれば、呉謙・国防省報道官は魏氏が「大胆にも台湾を(中国本土から)分裂させるなら、中国軍は必ずや一戦をいとわず、代償を惜しまない」と語ったと説明。「(統一のためには)武力行使を放棄しない」(習氏)とする台湾政策を踏まえ、改めて強硬姿勢を示した。
 だが、中国側の発表によれば、魏氏は「両軍は衝突や対立を避けるべきだ」とも述べ、ハイレベルの戦略的な意思疎通を保っていくことで双方が一致した。習氏の3期目入りが確実視される今秋の共産党大会を控え、内政に集中したい中国にとって、対立のさらなる激化は避けたいのが本音。対話に応じる構えは維持した。
 12日には魏氏がアジア安保会議で演説する予定。米中のはざまで揺れ動く東南アジア諸国の高官を前に、米主導の「対中包囲網」形成に反対しながら、米側に歩み寄りを呼び掛けるとみられる。

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