南オセチアにロシア編入論 ウクライナ侵攻さなか―プーチン政権「戦果」模索

東京, 4月2日, /AJMEDIA/

 ウクライナで東部の親ロシア派「保護」を口実にしたロシアの侵攻が続く一方、ジョージア(グルジア)北部の親ロ派支配地域、南オセチアのロシア編入論が浮上している。南オセチアのビビロフ「大統領」は3月末、編入に向けた法的手続きに入る方針を表明。プーチン政権の意を受けた発言とみられ、ウクライナ東部の親ロ派が編入を検討している動きとも関連がありそうだ。
 ◇ジョージアに共通点
 「(ロシア南部)北オセチア共和国との統合が必要だ」。旧ソ連軍出身のビビロフ氏は31日、ロシア国営テレビにこう主張。プーチン政権が勢力圏を重視する中、編入に意欲を示した。
 南オセチアは、ロシアが軍事介入した2008年のジョージア紛争の舞台。やはり親ロ派住民の「保護」が名目だった。結果、二つの分離独立地域、南オセチアとアブハジアはロシアから「国家」承認された。
 ウクライナもジョージアも旧ソ連構成国で、08年に北大西洋条約機構(NATO)から「将来的」な加盟を約束されるなど、欧米に接近していた点で共通する。ウクライナ東部の親ロ派支配地域「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」は今年2月下旬、プーチン大統領が「国家」として承認。国際社会は認めず、南オセチアと同じ状態となった。
 プーチン政権は、ウクライナ侵攻を続けるものの、首都キーウ(キエフ)など北部の制圧に失敗し、激戦地マリウポリを含む東部の親ロ派の勢力拡大に作戦をシフトする。日米欧から大規模制裁を受ける中、停戦を受け入れる際、ロシア国内にアピールする必要がある「目に見える戦果」づくりを急いでいるもようだ。
 ただ、東部はもともとロシアが親ロ派を通じて間接支配していた地域。仮に併合を強行しても、軍や経済に多大な犠牲を強いた「特別軍事作戦」の成果としては、明らかに見劣りする。
 ◇ロシアと運命共同体
 このため戦果を「かさ上げ」しようと、ロシアにとってウクライナと同じく対NATOの前線であるジョージアで、編入論が持ち上がった可能性がありそうだ。くしくも南オセチアは現在、ウクライナに武装部隊を派遣しており、ロシアと「運命共同体」であるとも主張されている。
 また、報道管制が敷かれてもロシア軍の苦戦は本国に漏れ伝わっている。南オセチア問題は、国民の目をそらす材料になるとみられる。
 アブハジアは、南オセチアに同調しない方針。一方、ルガンスク人民共和国の幹部が3月下旬、編入に向けた住民投票に言及した際は、ロシア下院の有力議員が火消しを図った。この議員は今回、南オセチアの編入は「法的に可能」と指摘するものの、実現に動けば、クリミア半島併合のように国際社会から批判を浴びるのは必至で、あくまで観測気球にとどまることもあり得る。

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