入管法、問われる人権重視 「政府不信」払拭課題

東京, 4月29日, /AJMEDIA/

外国人の収容・送還ルールを見直す入管難民法改正案は、28日の衆院法務委員会で可決され、大型連休明けに衆院を通過する見通しとなった。政府・与党が世論の批判が高まる中で成立を断念してから2年。ただ、批判の根底にあった「政府不信」が解消されたとは言えず、人権を重視した入管行政を進められるかが一層問われそうだ。
 「難民認定を2回認められなかった人が直ちに送還される危険性がある。母国で迫害を受ける恐れがある人には死刑執行に等しい」。立憲民主党の米山隆一氏は28日の衆院法務委で、改正案の問題点を指摘し、廃案を要求した。
 政府が法改正を目指すのは、国外退去に応じない外国人が昨年末時点で4233人に上り、入管施設の収容期間が長期化。収容中の外国人が健康を害するケースも出ているためだ。
 改正案は難民認定申請の「乱用」による退去回避を防ぐため、認定手続き中の一律送還停止規定を見直し、申請が3回目以降なら送還を可能にする。一方、在留特別許可の申請手続きなど救済措置も創設する。
 2021年に改正案への反対論が噴出した背景には「入管行政への不信感」(立民幹部)があった。難民支援協会によると、同年の日本の難民認定率は0.7%。ドイツ(26%)やカナダ(62%)と比べ極めて低い。にもかかわらず、申請を事実上2回に制限すれば、保護すべき外国人まで送還されかねないとの指摘だった。
 同年3月には入管施設に収容中のスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん=当時(33)=が死亡。「入管は人権軽視」(立民若手)との批判が反対論を増幅させた。
 審議中の改正案は21年の法案と骨格は同じ。それでも今回、衆院委可決まで進んだのは、野党の足並みが乱れたからだ。難民調査官の育成明記などの修正に与党が応じ、日本維新の会と国民民主党は改正案に賛成。最終局面で修正協議から離脱した立民は、共産党とともに反対した。
 ウクライナ情勢も後押しした。日本は同国から避難民2000人超を受け入れたが、厳密には「難民」には該当しないとの立場。避難民の法的地位は曖昧だ。改正案には「準難民」制度の創設を盛り込み、政府は成立すれば確実に保護できると主張した。
 しかし、入管行政への懸念が払拭(ふっしょく)されたわけではない。国連人権理事会の特別報告者は18日、改正案の抜本的見直しを求める書簡を政府に送付した。衆院法務委を傍聴したウィシュマさんの妹のポールニマさんは「国に帰れず、お金がなく、言葉を話せない外国人のことをちゃんと考えてください」と記者団に訴えた。

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