中国軍、「能力不足」解消急ぐ ウクライナ侵攻が教訓―全人代

東京, 3月6日, /AJMEDIA/

【北京時事】中国の習近平指導部は5日、経済成長目標を大幅に上回る伸びの国防予算案を公表し、強軍路線の継続を鮮明にした。装備の近代化が急速に進むが、中国軍は実戦経験に乏しい。5日の政府活動報告は「実戦的訓練に力を入れる」と強調。ウクライナ侵攻におけるロシア軍の苦戦も教訓として、「能力不足」の解消を急いでいる。
習指導部発足後、著しいのが海軍の強化だ。昨年の米国防総省報告書によると、中国海軍は世界最多の約340隻の軍艦を保有し、300隻足らずの米軍を上回っている。最近は空母や強襲揚陸艦のような大型艦の建造が続き、2025年までに400隻に達すると予想されている。
 一方で、中国軍は1979年の中越戦争を最後に本格的な戦闘を経験しておらず、第2次世界大戦後も実戦を重ねてきた米軍との実力差は大きい。全国人民代表大会(全人代)開幕に先立ち、軍機関紙・解放軍報は頻繁に「能力不足」の解消を将兵に求める記事を掲載。1日付の同紙は「能力が不十分な指揮官がまだ存在する」と苦言を呈した。
 台湾への武力侵攻を視野に入れる習指導部が急務としているのが、陸海空などの軍種をまたいで行う統合作戦能力の向上だ。ウクライナ侵攻をきっかけに、中国軍は統合作戦能力の重要性を改めて認識している。1月12日付の解放軍報はロシア軍について「統合作戦能力が不十分だ」と断じた。同紙は、ロシア軍は「伝統的な戦法」にとどまっているとも分析し、中国軍の戒めとしている。
 実力不足を補うため、中国軍は人工知能(AI)に期待している。AIによって自律的に動作する無人機に加え、訓練や作戦立案でもAIを導入。昨年10月の党大会で、習総書記(国家主席)はAIを活用した戦闘力の強化を指示した。
 ただ、実戦に基づくデータが不足していては、優れたAIの開発は困難だ。香田洋二元自衛艦隊司令官は「中国が『理論上100点に近いAI』を作ることはできるだろうが、米軍との実戦で機能するとは限らない」と指摘する。
 このため、中国が米軍の行動を抑えるには、核戦力に頼らざるを得ないという見方がある。解放軍報はウクライナ侵攻に関する記事で「西側の圧力に直面し、ロシアは核の実力を誇示し、核抑止力のシグナルを高らかに発した」と評価した。

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