「銃規制を」届かぬ声 相次ぐ乱射、根強い分断―米中間選挙の争点に

東京, 11月6日, /AJMEDIA/

 「銃規制を」「子供に安全な学校を」。8日に中間選挙を控えた米国で今年、乱射事件が相次いだ。南部テキサス州では5月、児童と教師の計21人が犠牲となる惨事が発生し、銃の購入年齢引き上げなど規制強化が争点の一つとなった。しかし「自衛に銃は必要」という声も根強く、有権者の分断は深いままだ。
 ◇絶えぬ祈り
 テキサス州第2の都市サンアントニオから西へ約130キロ、メキシコ国境近くの人口約1万5000人の街ユバルディ。車が行き来する通りから横道に入ると、遠くからニワトリや犬の鳴き声が聞こえてくる。
 住宅街を5分ほど歩いたところに、柵に囲まれ人の姿がなくなったロブ小学校がある。夏休み直前の5月24日、この場所で18歳の男が教室に侵入し、半自動小銃AR15を乱射。9~48歳の児童19人と教師2人の命が奪われた。
 校名とともに「ようこそ」と掲げられた看板の前には、犠牲者の名前を記した白い十字架が並ぶ。事件から5カ月がたった10月下旬にも、静かに祈りをささげる人々の姿があった。
 旅行中に立ち寄ったというナンシー・モラレスさん(61)は「胸が張り裂けそう。私には3人の孫がいる。彼らを守るためにも変化が必要だわ」と銃規制強化を求めた。
 ◇学校が怖い
 「全米ライフル協会(NRA)の利益よりも、子供たちの命を優先させる」。10月27日、テキサス州知事選の民主党候補ベト・オルーク元下院議員(50)がサンアントニオの広場で声を張り上げると、集まった約200人の支持者から歓声が上がった。若さや雄弁さから「民主党のホープ」の一人とされるオルーク氏は、銃規制強化などを訴え、共和党の現職グレッグ・アボット知事(64)に挑んでいる。
 アボット氏は、ロブ小学校の事件について「(犯人の)精神衛生上の問題」が原因だったと主張。遺族らが求める半自動小銃の購入年齢引き上げなどに否定的な姿勢を示している。テキサス州では酒類は21歳からだが、半自動小銃は18歳から買うことができる。
 母マンディさん(48)と広場に来たマーズさん(12)は「学校が怖い。規制が必要だ」と不安を口にする。マンディさんも「事件以降、何も(規制などが)変わっていないのに子供を学校に戻すのは、とても恐ろしい」と吐露。「銃を持つのは構わない。ただ安全と責任を持ってほしい。それは無理な要求ではないはずだ」と述べた。
 ◇それでも共和優勢
 ユバルディで不動産業などを営むレネ・ノラスコさん(68)は、常に銃を持ち歩く。「ここには不法移民がたくさんいる。家に侵入されたこともある。自分の身は自分で守りたい」と強調し、知事選ではアボット氏に投票すると断言した。
 同じく銃を持つという娘のローレンさん(31)も「警察が来る前にみんなを守れる」と力説。サンアントニオで運転手として働くマリオ・コンデさん(62)は「銃よりも移民が問題。移民に寛容な民主党はダメだ」と、共和党支持を明言した。
 選挙分析サイト「ファイブサーティーエイト」によると、11月4日時点で各種世論調査の支持率平均値はアボット氏が52.0%、オルーク氏が43.0%。アボット氏が一貫して優勢だ。
 ユバルディで犠牲者の十字架に花を手向けていた女性は、涙を浮かべながら「この地域に住む一人の親として、ただ半自動小銃を禁止してほしい。でも無理でしょうね。それがテキサスだから」と語った。

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