「原発より石炭選んだ」 電力供給・核のごみに不安―最後の灯消える村・ドイツ南部

東京, 4月9日, /AJMEDIA/

ドイツの「脱原発」が完了する。2011年の東京電力福島第1原発事故を受けて原発の段階的な廃止が加速し、現在も稼働する3基が15日で停止する。「原発を長く使うより石炭を掘ることを選んだ」―。政府が石炭火力を維持する一方で原発停止を急いだことに国内では不満もくすぶる。原発の地元住民らは、電力供給や核のごみに不安を抱えつつ、最後の灯が消える時を静かに待っていた。
南部バイエルン州にあるイーザル原発。州都ミュンヘンからは電車と徒歩で約2時間の距離にあり、現在は2号機のみが稼働。周辺350万世帯分の電力を供給してきた。畑や牧草地に囲まれそびえ立つ巨大なコンクリート建造物からは水蒸気が立ち上る。守衛として30年以上勤めてきたという男性(60)は「あと4~5年は仕事が続けられるだろうが、それでおしまい」と寂しげな表情で語った。
 「申し分ない技術があるのに、取り壊されてしまう」。同原発に近い村ニーダーアイヒバッハのヨゼフ・クラウス村長(60)は悔しさをにじませた。人口約4000人の村にとって原発停止の経済的損失は大きく、「残るのは行き先の無い使用済み核燃料だけだ」と嘆いた。
 温暖化対策が世界的課題となる中、独政府も二酸化炭素(CO2)排出源である石炭火力の完全廃止と再生可能エネルギーの拡大を目指している。しかし、ロシアのウクライナ侵攻を機にロシア産天然ガスの供給が滞るとエネルギー不足に陥り、停止していた石炭火力の再稼働に踏み切った。
 一方、原発を封じられる内陸のバイエルン州は発電容量の大きい洋上風力が使えず、海に面した北部からの電力融通に頼らざるを得ない。イーザル原発に続く道を犬と散歩していた女性(70)は「再生エネで本当にやっていけるのか」と顔をしかめ、原発停止を「合理的ではなく、政治的決定だ」となじった。
 村役場前に住む男性ヘーベルト・ペメルさん(75)は、「テロが怖い」との理由で停止には賛成の立場。住民の間でも見解が割れる中、約35年間稼働してきたドイツ最後の原発は間もなく停止する。

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