防衛力強化、詳述避ける岸田首相 野党追及に「手明かせぬ」連発―予算委

東京, 2月3日, /AJMEDIA/

 岸田政権が昨年末に決めた防衛力の抜本的強化を巡る衆院予算委員会の議論が熱を帯びている。岸田文雄首相と全閣僚が出席する3日間の基本的質疑で、野党は安全保障関連3文書に保有が明記された反撃能力(敵基地攻撃能力)の具体像を明らかにしようと追及。しかし、首相は「安保上、適切ではない」と詳細な説明を避ける場面が多く、議論は深まっていない。
 「手の内は明らかにしない」。首相は基本的質疑の初日となる1月30日、立憲民主党の岡田克也幹事長から米国製巡航ミサイル「トマホーク」の購入予定数を問われたが、他国に防衛能力を把握されかねないと説明を拒んだ。
 こうしたやりとりは、基本的質疑で幾度となく交わされた。共産党の志位和夫委員長は、政府が反撃能力を担う装備と想定する12式地対艦誘導弾、高速滑空弾、極超音速誘導弾、トマホークなどの射程距離を質問。浜田靖一防衛相はこれに「安保上、控える」と答えなかった。
 首相が国民の不安解消に努めたかも疑問だ。沖縄県石垣市は「反撃能力の石垣島配備は到底容認できない」との意見書を採択。志位氏は見解をただしたが、首相は「南西地域の防衛体制強化は防衛力強化の柱だ。丁寧に説明を続けたい」と述べるにとどめた。
 その一方で、踏み込んだ答弁もあった。3文書は反撃能力を行使するケースとして「弾道ミサイル等による攻撃」を受けた場合と明記する。「等」に着目した立民の玄葉光一郎元外相が「(攻めてきた)戦闘機や艦船の母港に向け、行使することはあるか」と迫ると、首相は「個別具体的に考える」と否定しなかった。
 集団的自衛権の一環として反撃能力を行使する「危険性」も議論になった。米国などに対する攻撃だけで日本が反撃に出た場合、「相手国から先制攻撃とみなされ、専守防衛の枠を超えてしまう」(立民幹部)との懸念からだ。
 岡田氏は、集団的自衛権の発動下で反撃能力の行使が想定される事例を示すよう要求。しかし、首相は「全くわが国と関係ない事態で米軍が攻撃を受けても、わが国が対応することは考えられない」としつつ、「国民の命や暮らしを守る手だてを明らかにすることは控える」と応じなかった。
 防衛力強化の詳細が見えない中、財源に関する議論も広がりを欠く。岡田氏は質疑の中で「(トマホークが)何発か言えなければ、(今後5年間の防衛費総額の)43兆円が正しいか、どう検証するのか」と批判。志位氏は2日の記者会見で「聞いたことに答えず、ただ時間をつぶす不誠実な答弁の繰り返しだ」と首相の国会対応を酷評した。

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