細田衆院議長の問われる「資質」

東京, 6月6日, /AJMEDIA/

 細田博之衆院議長が「軽率で立場をわきまえない言動」(立憲民主党幹部)の連発で、国権の最高機関の長としての「資質」を厳しく問われている。公正中立が求められる立場にもかかわらず、衆院での1票の格差是正のための「10増10減」案に公然と異議を唱える一方、国会議員の歳費を「手取りの月給が100万円未満」とその少なさに不満をあらわにした。さらに、一部週刊誌に女性記者への“セクハラ疑惑”まで報じられ、満身創痍(そうい)の状況だ。歳費をめぐっては「すべて『国民の血税』という認識ゼロ」と、インターネット上でも大炎上。世論の厳しさに細田氏は、与野党幹部に「今後は立場を自覚して発言を控える」と頭を下げたが、参院選圧勝を狙う自民党の「思わぬ火種」(幹部)になりそうだ。
 細田氏の問題発言は大型連休明けの10日、東京都内で開かれた自民党議員のパーティーで飛び出した。持論の国会議員の定数減反対に絡めて「減らせばいいのか考えた方がいい。手取りの月給が100万円未満の国会議員を多少増やしても罰は当たらない」と力説、「上場会社の社長なら(年収で)1億円はもらう」と付け加えた。細田氏は人口が2番目に少ない島根県の選出で、10増10減については「地方いじめ」と主張する。これに対し、野党側は「(議員定数を増やせば)絶対に罰が当たる」(日本維新の会の馬場伸幸共同代表)、「議長の資質も含めて、大きな問題がある」(立民の馬淵澄夫国対委員長)などと猛反発。セクハラ疑惑でも議院運営委員会での公式説明を要求したが、細田氏は「事実無根」と否定した上で、文書での釈明などでかわす構えだ。
◇苦労知らずの2代目世襲議員のおごり
 そもそも、細田氏の言う「手取りの月給が100万円未満」という議員歳費は、欧米各国に比べても決して低額ではない。しかも、日本の国会議員には(1)月額100万円の調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)(2)格安な議員宿舎の提供(3)無料で選挙区と往復できるJRパスや航空券──など、数々の特権がある。このため、ネット上では「守銭奴」「すぐに辞めろ」など、怒りの書き込みが相次いだ。この騒ぎに細田氏は、12日夜に懇談した与野党幹部に「あちこちから怒られて反省している。今後は発言を控える」と陳謝を余儀なくされた。
 細田氏は2代目の世襲議員で11回連続当選、自民党幹事長や党内の最大派閥・清和会(現安倍派)の会長を務めた実力者。父・吉蔵氏(故人)が党総務会長、運輸相などを務めた有力議員だったため、いわゆる「地盤・看板・かばん」を継承し、「保守地盤の島根で楽々と当選を重ねてきた」人物だ。それだけに、吉蔵氏と親密だった政界関係者は「苦労知らずのお坊ちゃん政治家特有のおごりがあったのでは」と苦言を呈す。ただ、細田氏が政界入りする前の通商産業省(現経済産業省)時代の同僚は「2世政治家らしくない、とても常識的で謙虚な人物だった。あんな発言をするとは信じられない」と、その変貌ぶりに首をかしげる。
 議長就任前の細田氏は、最大派閥の領袖(りょうしゅう)として当時の安倍晋三首相を支えて長期政権に貢献し、その論功で議長に就任したとの見方も多い。騒動の渦中の17日、盛大に開催された安倍派の政治資金パーティーで、来賓としてトップバッターの岸田文雄首相に続いて登壇し、「7年間、派閥会長を務め、議長就任で安倍さんにバトンタッチした」と自らの存在を誇示したが、あいさつはわずか1分余りで、問題発言への言及は避けた。ただ、安倍派議員からは「参院選への逆風になる」との声が漏れるなど、当分は“針のむしろ”が続きそうだ。【政治ジャーナリスト・泉 宏】
 「地方行政」5月30日号より。

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