日本の漫画「タダ読み」被害深刻化 外国語の海賊版対策 急務に

東京, 03月25日 /AJMEDIA/

日本の漫画が世界で人気を集める中、外国語に翻訳された作品を無断で掲載した海賊版サイトの被害が深刻化しています。スマートフォンなどのアプリを配信する公式ストアでも海賊版に誘導する外国語の違法なアプリが複数確認されていて、業界団体は対策が必要だとしています。

出版社などでつくる一般社団法人「ABJ」がことし2月に調べたところ、漫画などの出版物を無断で掲載する海賊版サイトは1207サイトに上り、このうち7割以上を占める913サイトが英語やベトナム語などに翻訳された作品を集めた外国語のサイトだったことがわかりました。

ABJによりますと、日本語の海賊版サイトのアクセス数は出版社などの対策によって一時期の4分の1程度に減少していますが、外国語のサイトは近年、ベトナム語など東南アジア向けを中心に拡大していて、アクセス数は日本語版の少なくとも5倍以上、著作権侵害の被害額も大幅に上回るとみられます。

また、海賊版に誘導する外国語の違法なアプリも課題となっていて、大手出版社「KADOKAWA」によりますと、去年2月、グーグルとアップルが運営する公式ストアで、外国語に翻訳された漫画の海賊版アプリが少なくとも5つ確認されたということです。

公式ストアでのアプリの配信は著作権を侵害しないことなどが要件となっていて、出版社側が法的手続きをとり、これらのアプリは削除されましたが、出版やアニメの会社などでつくる「CODA=コンテンツ海外流通促進機構」によりますと、公式ストアでは国や地域によって表示されるアプリが異なるため、外国語版は実態把握も難しいということです。

最近は、海外で正規版の流通を目指す電子出版の会社から海賊版アプリに関する被害相談も寄せられているということで、CODAは対策が必要だとしています。

海賊版サイト 被害の現状は
「ABJ」の2月の調査では、漫画などの出版物を無断で掲載する海賊版サイトは、1207サイトに上りました。

このうち
▽日本語のものが294サイトだったのに対し
▽外国語に翻訳されたものは913サイトでした。

言語別では、英語が466サイトと最多ですが、ほかにも中国語、ロシア語、スペイン語などさまざまな国や地域に広がっていて、中でもベトナム語など東南アジア向けとみられるサイトが顕著に増えているということです。

日本語の海賊版サイトへのアクセス数は、2021年の後半には、上位10サイトで合計4億を超えていましたが、巨大サイトの閉鎖や運営者の摘発、問題の認識の広がりなどによって最近は1億ほどにまで減少しています。

一方、外国語版はサイト数、アクセス数ともに多い状態が続いているということです。

いわゆる「タダ読み」された被害額は、日本語版が去年1年間で3818億円という試算に対し、外国語版はこれを大幅に上回るとみられ、業界団体では喫緊の重要課題だとしています。

専門家「運営者の摘発 刑事罰などゴールに対策を」
著作権や海賊版の問題に詳しい、中島博之 弁護士は「英語の海賊版サイトでは、月間2億アクセス以上を集める巨大なサイトがあるほか、検知されないように日本からのアクセスを制限するサイトもある。海賊版のアプリも問題となっていて、正規のプラットフォーム上で配信されていると、ちゃんとしたアプリだと勘違いしてダウンロードしてしまう人もいるのではないか」と指摘しています。

そのうえで「アニメも漫画も世界的に人気で、本来なら正規のビジネスで権利者が得るはずの利益が海賊版によって失われるのは非常に大きな問題だ。サイトやアプリを閉鎖させるだけでなく、運営者を摘発し、刑事罰などを与えることをゴールとして対策をとることが重要だ」と話しています。

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