武器供与、段階的に拡大 欧米で「支援疲れ」も―ウクライナ侵攻1年

東京, 2月24日, /AJMEDIA/

ロシアによる侵攻開始以降、欧米諸国はウクライナへの武器支援を段階的に拡大してきた。戦場では欧米製の高性能兵器が効果を発揮し、ロシアの進軍を食い止めることに成功。しかし、侵攻が2年目に突入する中、欧米では「支援疲れ」が見え始めている。
 ◇総額4兆円
 「米国は大西洋から太平洋にまたがる国々をまとめ、前例のない支援でウクライナの防衛を支えてきた。この支援は今後も続く」。バイデン米大統領は20日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を電撃訪問し、支援継続の決意を示した。
 米国の武器支援の総額は、侵攻開始から今月20日までで約298億ドル(約4兆円)に上る。ドイツのキール世界経済研究所によると、1月時点で世界全体の支援の3分の2以上を米国が占めた。同研究所のクリストフ・トレベシュ氏は「米国が大規模な支援を主導し、欧州がそれに追随した」と指摘した。
 供与する武器は、時間とともに質が向上し、量も増大した。米国は当初、ロシアを過度に刺激することを警戒し、高性能兵器の供与をためらった。しかし、昨年4月にキーウ近郊ブチャでロシア軍による民間人虐殺が発覚。その後も残虐行為が相次ぐ中、欧米諸国は支援強化に傾いた。
 ◇戦場で効果発揮
 侵攻初期は対戦車ミサイル「ジャベリン」などが、強大な戦力を持つロシア軍を食い止めるのに役立った。昨年6月に引き渡された高機動ロケット砲システム(HIMARS)は、ロシアの後方拠点をたたくのに効果を発揮。同12月には地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」、今年1月には欧米製の主力戦車の供与も決まった。
 ウクライナのレズニコフ国防相は、欧米に武器の供与を要請しても「最初はまず『ノー』と闘わねばならない」と述懐。「しかし、それは『現時点ではノー』という意味だ」とも語り、今後も欧米に粘り強く働き掛ける考えだ。
 今春の反転攻勢を見据え、ウクライナが目下要求しているのは長距離ミサイルと戦闘機だ。米政府内には慎重論が根強いが、米下院外交委員会のマッコール委員長は「ミサイルと戦闘機の供与へ勢いが強まっている」と明らかにした。
 ◇生産上回る弾薬消費
 ただ、武器支援にはさまざまな制約も見えてきた。北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は「ウクライナの弾薬の消費量は、NATOの現在の生産量の数倍だ」と強調。防衛産業と連携して武器・弾薬の生産を加速させる必要があると訴えた。一部の弾薬は米軍内でも逼迫(ひっぱく)が伝えられている。
 世論の支持にも陰りが見える。シカゴ大と米メディアが今月公表した世論調査結果によれば、ウクライナへの武器支援を支持する米国民の割合は48%で、昨年5月時点の60%から低下した。
 米議会内にはウクライナ支援よりインフレ対策などを優先すべきだという声も、一部から上がっている。侵攻が長期化すれば、2024年の米大統領選に向けて支援の是非が争点化する可能性も捨てきれない。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts