欧州、脱ロシア・中国に苦戦 経済安保の欠如露呈―成長モデル転換、いばらの道・ウクライナ侵攻1年

東京, 2月24日, /AJMEDIA/

ロシアのウクライナ侵攻は、欧州がエネルギー分野で対ロシア依存を深めていた実態を改めて浮き彫りにした。ロシア産天然ガスの供給が滞ると、急激なインフレが襲い、景気は一気に冷え込んだ。経済安全保障の欠如が露呈する中、経済関係を強めてきた中国依存からの脱却を模索する機運も高まる。しかし、安いロシア産エネルギーと中国の巨大市場をあてにした成長モデルの転換は容易ではなく、実現はいばらの道となりそうだ。
 「ロシアは影響力を行使するため、欧州で強固なコネクションを築いてきた」。ブルガリアのシンクタンク「民主主義研究センター」は、欧州のロシア依存について、プーチン政権が戦略的に仕向けたものだったと指摘。特にロシア資本を多く受け入れたドイツへの影響は甚大と分析した。
 天然ガスの過半をロシアに依存していたドイツは侵攻開始直前まで、ロシアからのガス輸送事業「ノルドストリーム2」の継続に固執。ウクライナ支援の出足も遅かった。一方、ロシアが西側の経済制裁に報復する形でガス供給を止めると、禁じ手だった原発の稼働延長を決定。それでもエネルギー価格の上昇に歯止めはかからず、昨年10~12月期の経済成長率はマイナスに陥った。
 欧州ではガス需要が一服し、危機感が後退しつつあるが、国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は「来冬こそ正念場だ」と警鐘を鳴らす。新型コロナウイルス対策を解除した中国の需要回復で、「限られた供給を巡る争奪戦が激化する」(英石油大手シェル)との見方が支配的だ。
 欧州は化石燃料だけでなく、核燃料でもロシアに依存する。欧州連合(EU)は対ロ制裁分野に原子力産業の追加を検討しているものの、ロシアの原子力企業との関係が深いハンガリーは「問題外だ」(オルバン首相)と猛反発。原発大国のフランスも及び腰とみられる。
 侵攻は、欧州の中国に対する警戒感も一段と高めた。習近平政権の下で独裁色を強め、台湾への武力行使も辞さないと豪語する中国が、ロシアのように振る舞うとの懸念が背景にある。EUは脱中国依存に向け、中国が大半を占めるレアアース(希土類)の生産をEU域内で拡大することなどを模索している。しかし、欧州最大の貿易相手国であるという現実を前に、経済界の反応は鈍い。
 中国外交トップの王毅・共産党政治局員は今月、欧州諸国を歴訪。15日にはマクロン仏大統領と会談し、「中国経済は急回復しており、交流を本格的に再開させる準備がある」と関係つなぎ留めへ秋波を送った。
 民主主義研究センターは、同じ価値観を共有する国との関係を強めることが長期的には欧州の利益になると主張。「(変化に伴う)激しい痛みを受け入れるのが政治の責任だ」と大胆な政策転換を迫っている。

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