改憲案、25日国民投票 大統領の権限強化へ―チュニジア

東京, 7月24日, /AJMEDIA/

チュニジアで25日、大統領権限を大幅に拡大する改憲案の賛否を問う国民投票が行われる。反対派は、強権姿勢を強めるサイード大統領の権限肥大につながると警戒するが、改憲案は低投票率ながら承認されるとみられている。2011年に民主化を実現し、民主化運動「アラブの春」唯一の成功例とされるチュニジアは、「独裁回帰」への岐路に立っている。
 現行憲法では、大統領が国防と外交を担い、首相が内政を受け持つ分権が確立されている。ロイター通信によると、これに対し先月30日に公表された改憲案は、法案・予算案・条約案の提出権や議会の解散権を大統領に集め、閣僚の任免でも議会の承認を不要とする。判事の任命権も大統領に付与する。
 大統領の任期は2期10年までだが、国家への「差し迫った危機」を理由に延長可能で、罷免の規定もない。
 議会最大勢力だったイスラム主義政党アンナハダを率いるガンヌーシ氏は、「独裁に向かっている」と批判。改憲案の起草委員会のベライド委員長はAFP通信に、提出した草案と公表された案は「全く違う」と指摘し、「危険と重大な欠陥をはらんでいる」と不支持を表明する異例の事態となった。
 反対勢力は国民投票のボイコットを呼び掛け、デモを展開している。だが、民主化以降も不況に苦しむ市民の間には政治不信が根強く、投票には「冷ややか」(AFP)だ。影響力のある労組連合も反対のための動員は行わない方針で、改憲阻止を訴える動きは広がりを欠いている。
 サイード氏は昨年7月、新型コロナウイルス感染拡大への政府の無策に怒った市民によるデモを機に権力掌握に着手し、既存政治の抜本的改革を約束した。議会を停止して首相を解任し、今年3月には対抗措置を模索した議会を解散。司法の独立の象徴とされた最高司法評議会も2月に解体に追い込み、6月に汚職などの理由で裁判官57人を免職にした。
 サイード氏は司法、行政、立法の各分野で権限を拡大させており、改憲により制度上の権力基盤を盤石にしたい考えだ。

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