捜査拡大、究明は道半ば 広がり欠く政権批判―韓国雑踏事故1カ月

東京, 11月29日, /AJMEDIA/

ハロウィーンを前に韓国ソウル・梨泰院で起きた大規模雑踏事故から29日で1カ月。警察の捜査は、警察、消防、地元自治体など広範囲で進められている。ただ、遺族らは責任追及の声を上げるものの、捜査は道半ば。尹錫悦政権への批判も広がりを欠き、社会に広がった衝撃は徐々に薄らぎつつある。
 ▽期限示せず長期化も
 事故では外国人26人を含む158人が死亡。特別捜査本部は当時の地元警察署長らを含む17人を業務上過失致死傷などの疑いで捜査対象にし、これまで80カ所以上を家宅捜索。連日対象者や参考人を事情聴取している。
 事前の安全対策の不備、現場への出動や報告の遅れ、事故の危険を指摘する報告書の隠蔽(いんぺい)など、焦点は多岐にわたる。それだけに、警察関係者も「捜査の期限は示せない」と一定の結果が出るまで時間がかかることを示唆している。
 22日には一部の遺族が初めて記者会見し、「無能な政府の過ちだ」と大統領や政府に謝罪や真相究明を訴えた。しかし、同じ高校の多数の生徒が犠牲になった2014年の客船「セウォル号」沈没事故とは異なり、今回は遺族同士のつながりがない。哀悼ムードを喚起し政権批判につなげようとした市民団体が14日、入手した犠牲者名簿を一方的に公表したが、むしろ遺族の同意がない公表に非難が殺到。尹大統領の支持率も事故を挟んでほとんど変動していない。
 ▽制度不備を露呈
 事故から間もない4日、ソウル市やサッカー協会はワールドカップ(W杯)カタール大会での街頭応援見送りを決めたが、大会が始まると容認。24日の韓国代表の初戦では約2万6000人がソウル中心部の光化門広場に集まったとされ、社会の雰囲気は日常を取り戻しつつある。
 日本で博士号を取得し現在は韓国災害情報学会会長の金泰煥・竜仁大教授は「全て国や行政の責任にして、悲しい出来事を忘れたがる国民性がある」と指摘。責任追及以上に制度やシステムの改善が重要だと強調する。
 ハロウィーンや年末のカウントダウンで多くの若者が集まる東京都渋谷区では19年に定めた条例で、区や商店主などの事業者、来訪者の責務を明記。事前に関係行政機関と関係団体の協議の場を設けることを義務付けている。
 しかし韓国の場合、主催団体がない自発的な集まりではそうした法的根拠がない。金氏は「区、警察署、消防署、地元商工会が事前に協議会をつくり安全対策を立てるべきだったが、それがなかった」と指摘。若者が集結する地域は渋谷区のような条例を定めるよう政府や自治体に働き掛けているが、捜査が進行中で再発防止への動きは鈍いという。

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