幼保一元化、実現せず 縦割り打破に不安―こども家庭庁

東京, 12月22日, /AJMEDIA/

 子ども政策の司令塔「こども家庭庁」創設の基本方針が決まった。縦割りを打破し、いじめ、虐待、不登校、貧困など多岐にわたる子どもの課題に一元的に対処するのが狙いだ。ただ、岸田文雄首相が取りまとめに向けて指導力を発揮した形跡はなく、縦割りの象徴とされる幼稚園と保育所の一元化は今回も実現しなかった。
 「子ども目線に立って縦割りを排した行政を進めていく」。木原誠二官房副長官は21日の記者会見でこども家庭庁の意義をこう強調した。
 子ども政策は「たこつぼ」行政の典型だ。子どもの貧困対策は内閣府、犯罪保護は内閣官房、性的搾取は警察庁、虐待は厚生労働省が所管。内容の重なる「少子化社会対策大綱」「子供・若者育成支援推進大綱」「子供の貧困対策大綱」が別々に作成され、閣僚会議も別々に運営されてきた。
 基本方針はこれらの政策や大綱、会議をこども家庭庁で一元的に掌握し、専任の担当閣僚に他の閣僚への勧告権限を与えると明記した。ばらばらな取り組みに一体性を持たせる。
 基本方針で最大の焦点となったのが長年の懸案である幼保一元化だった。現在、幼稚園は文部科学省、保育所は厚労省、認定こども園は内閣府が所管する。4月に「子ども庁」の新設構想が持ち上がると、3府省が族議員を巻き込んで新たな受け皿の担い手をめぐる水面下の攻防を激化させた。
 結局、基本方針では保育所と認定こども園はこども家庭庁に移し、幼稚園は「文科省の下でこれまで通り」とされた。幼稚園など3施設の教育・保育の基準はこども家庭庁と文科省が共同で作成することから、政府関係者は「実質的な一元化」と力説するが、新たな縦割りに発展する恐れは否定できない。
 こども家庭庁はもともと菅義偉前首相肝煎りの政策。岸田首相は9月の党総裁選で公約に実現を記したものの、積極的に訴えたとは言いがたい。自民党内では「首相は関心がない」とささやく声もあり、当初想定された「こども庁」の名称は、家族重視の保守派の主張により「こども家庭庁」に変わった。
 政府は2023年度の創設を目指し、来年1月召集の通常国会に関連法案を提出する。しかし、野党からは早くも「(幼保を)完全に一元化すべきだ」(日本維新の会の馬場伸幸共同代表)との声が上がる。子ども政策は国民の関心も高く、参院選を控えた国会論戦の大きなテーマの一つになりそうだ。

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