債務危機再来、おびえる欧州 首相交代で「イタリア売り」

東京, 7月23日, /AJMEDIA/

欧州連合(EU)域内で3位の経済規模を持つイタリアの政治が、再び混乱している。ドラギ首相が辞めれば、市場で辛うじて保たれていたイタリア経済への信頼は消えそうだ。10年ほど前、欧州を襲った債務危機の再来を恐れる声が広がり始めている。
 イタリア経済の今後を支える原資となるのは、新型コロナウイルス危機に対するEUの経済再建策だ。しかし、資金拠出にはEUから求められた構造改革が必要で、国内の既得権層の抵抗は強い。イタリアの巨額の債務残高を前に、中国の「債務のわな」に沈んだスリランカの姿を重ね合わせた不安がよぎる。
 市場では「イタリア売り」が加速し、イタリア国債の金利が上昇。ロイター通信によれば、ドラギ氏が辞任を表明した21日、最も信用度の高いドイツ国債との利回り格差が拡大し、かつての欧州債務危機と重なる光景となった。当時の危機を救った一人が、欧州中央銀行(ECB)総裁を務めていたドラギ氏本人だった。
 ドラギ氏は昨年4月、国会で合計2215億ユーロ(約31兆円)規模の経済復興計画を発表した。財源として頼るのは、EUからの拠出金1915億ユーロ(約27兆円)。水素発電をはじめとする再生可能エネルギーへの移行や、訴訟手続きの迅速化など構造改革に着手したばかりだ。
 ミラノ工科大のジュリアーノ・ノーチ教授は、AFP通信に対し「ドラギ政権は何十年も待たれていた改革を実行中だった」と指摘。「ドラギ氏の辞任は、イタリアだけでなく欧州にとっても損失だ」と嘆いた。
 9月にも行われる総選挙では、政党支持率で首位の「イタリアの同胞」を中心とした右派政権が誕生するとみられている。しかし、欧州債務危機が吹き荒れた2011年、右派政権を率いたベルルスコーニ首相は、荒っぽい言動と未成年買春など疑惑の数々で相場を揺さぶる元凶となり、最終的にドイツのメルケル首相らが暗躍した欧州総掛かりの退陣工作で引きずり下ろされた。

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