中国の氷上シルクロード頓挫 幻の「最北の中華街」―北極圏進出に新たな余地も

東京, 11月2日, /AJMEDIA/

巨大経済圏構想「一帯一路」の一環として中国の習近平指導部が打ち出した「氷上のシルクロード」が壁に直面している。北極圏進出を視野に数々のプロジェクトを立ち上げたが、中国の影響力拡大を警戒する欧米諸国の反発で頓挫。ただ、各国が対ロシア投資から手を引く中、巻き返しを図る中国が付け入る「隙間」も生じている。
 ◇投資にまい進
 北極圏に位置するノルウェー北部キルケネス。2019年、人口約3500人のこの町に「世界上最北端的唐人街(世界最北の中華街)」と記された中国様式のゲートが建てられた。毎年恒例のフェスティバルのテーマに「中国の投資」が選ばれたからだ。
 中国は17年に氷上のシルクロード構想を発表して以降、北極圏進出に突き進んだ。地球温暖化の影響で北極の海氷面積が減少し、新たな資源採掘や、アジアと欧州間の航行時間を3~4割短縮できる北極海航路の開拓の可能性が出てきたためだった。
 グリーンランドのレアアース(希土類)採掘、米アラスカ州の液化天然ガス開発、カナダ北部の金鉱山、アイスランドやノルウェーの土地買収など、資源開発やインフラ投資を積極的に推進。キルケネスにも目を付け、鉄道建設計画を持ち掛けた。
 ◇幻の中華街
 だが、これらの事業はほとんど成果を挙げなかった。ノルウェー北極大学のマーク・ランテイン准教授は「米国主導の対中包囲網に加え、北極圏諸国が中国の投資に伴う財政・安全保障上のリスクに警戒を強めた」と分析。新型コロナウイルスの流行も逆風となり、「ロシアを除く地域での事業は、中断を余儀なくされたか失敗に終わった」と語る。
 ロシアのウクライナ侵攻が中国の北極圏進出に与える影響は未知数だ。ランテイン氏は「中国はロシア批判を控える半面、欧米の制裁に巻き込まれるのを恐れている」として、当面は北極圏での中ロ協力が鈍化すると予想する。一方、別の専門家は「欧米の制裁下に置かれたロシアは北極圏開発の資金源としてだけでなく、西側への対抗カードとして中国と連携強化を図るだろう」とみる。
 「最北の中華街」をうたったキルケネスのフェスティバルは、春節(旧正月)休暇と重なったこともあり、中国人観光客は数えるほど。中華街「建設」の夢もフェスティバルと共に5日間で終わった。だが、国境を接するロシアとの経済交流が閉ざされた今、地元には中国への期待が戻ってきた。
 「キルケネスは北極海航路上に位置し、大型船舶も停泊できる」とラファエルセン前市長はアピールする。若者の流出を防ぎ、過疎・高齢化を食い止めるには雇用創出が不可欠だ。「投資があれば、アジアと欧州を結ぶ海運の拠点として第2のシンガポールになれる」。ラファエルセン氏はそう言った後、「大きな夢だが」と笑った。

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