タカラトミー、JAXAらと球体から変形する月面探査ロボを開発 ゾイドやトランスフォーマー開発の知見を活かして

東京, 3月16日, /AJMEDIA/

タカラトミーがJAXA等と共同開発した超小型の変形型月面ロボット「SORA-Q」(ソラキュー)が、小型月着陸実証機「SLIM」に搭載される。

実際に月面でのデータ取得を行う計画に使用される「SORA-Q」は、世界でも珍しい球体から変形する月面探査ロボット。

その開発には、タカラトミーの玩具シリーズ「ゾイド」や「トランスフォーマー」などのノウハウが生かされている。

超小型の変形型月面ロボット「SORA-Q」
「SORA-Q」は、直径約80mm、質量約250gの超小型の変形型月面ロボット。

名前は、宇宙を意味する「宙(そら)」と、宇宙に対する「Question(問い)」「Quest(探求)」、「球体」であること、そして横からのシルエットが「Q」に似ていることから名付けられた。

月面に着陸後、瞬時に球体が左右に拡張変形し、月面を走行することが可能。「バタフライ走行」と「クロール走行」の2種の走行モードがあり、あらゆる方向に転倒しても正位値に復帰し、平地だけでなく傾斜地も走行できる。

これらの機能に加えて、前後2つのカメラが搭載されており、このカメラで撮影した画像を別の探査機を経由して、地球に送信する計画が立てられている。

「ゾイド」「トランスフォーマー」「アイソボット」の知見を生かす
開発にはタカラトミーの玩具シリーズ「ゾイド」「トランスフォーマー」「アイソボット」の制作において培われた小型化、軽量化の知見と、変形機構に関わる技術が活用された。

2016年からJAXAおよびタカラトミーが筐体の共同研究を開始し、その後2019年にソニーグループ株式会社が、2021年に同志社大学が加わり、現在は4者で共同開発を進めている。

20回以上の機構試作を経て完成した「SORA-Q」開発エピソード全文
おもちゃの開発において重要な要素に「柔軟な発想」「多くの人の手に届きやすい低価格の実現」などが挙げられます。それらは「小型化」「軽量化」「シンプルな設計」につながり、宇宙事業において求められる要素と合致しました。おもちゃ作りの発想と技術が宇宙探査に活かされるということは大変うれしいことです。また、HAKUTO-Rに引き続きSLIMにより短期間で2度の月面探査の機会を得ることができて大変光栄に思います。

企画のスタートは、玩具会社らしいユニークな探査機が作りたいという想いからでした。機械工学や宇宙工学などを学んだ社員等によって結成された開発チームは、それぞれの分野から意見を出し合い、そこに玩具の柔軟な発想を組み合わせていきました。こうして誕生したのが世界でも珍しい球体から変形する探査機です。

「SORA-Q」は、球体にする事で月面までの輸送時の容積を小さくし、着陸時の衝撃に強く、どの角度でも展開、駆動を開始する事を可能にしました。本体に車輪を付ける考えではなく、本体が変形して車輪の役目を担う事で小型化・軽量化を実現しています。

開発過程においては月面環境を想定したさまざまな課題に直面しましたが、JAXAの研究者の方々と多くの議論を重ねるなかで、登坂性能、変形機構、形状、サイズ、質量、モーター選定、メインボードなど試行錯誤を繰り返し、過去の玩具技術をヒントにするなど20回以上の機構試作を経て、ようやく「SORA-Q」は完成しました。

研究スタートから6年、ついに「SORA-Q」を月へ送り出すことになりました。「SORA-Q」が宇宙でのミッションを果たしてくれることを心から願っています。みなさんにも地球から「SORA-Q」を応援していただけたらうれしいです。

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