「軟着陸」、まだ見えず 労働市場の過熱沈静化も―米

東京, 8月6日, /AJMEDIA/

【ワシントン時事】4日発表された7月の米雇用統計では、過熱気味だった米労働市場の沈静化が示された。ただ、賃金の伸びは依然として高水準で、米経済が物価安定と成長維持を両立する「ソフトランディング(軟着陸)」を実現できるかはなお視界不良だ。
7月の米就業者、18万7000人増 失業率は3.5%に改善

 景気を敏感に反映する非農業部門の就業者数は7月、前月比で18万7000人増と、市場予想(20万人増)を下回った。6月の伸びも18万人台に下方修正され、雇用創出の勢いは年初(47万2000人増)から確実に失われている。米連邦準備制度理事会(FRB)は物価上昇圧力を和らげるため、異例の速さの利上げで労働市場の鈍化を図っており、FRBの狙い通りと言える。
 しかし、7月の平均時給は前年同月比4.4%上昇と、伸び率は前月から変わらず。5%超で推移していた昨年からは減速しているものの、家賃以外のサービス分野でコストの大部分を占める賃金上昇の勢いは「FRBにとって引き続き強過ぎる」(米エコノミスト)状況だ。
 米国のインフレ率は昨年半ば以降、順調に低下している。一時約40年ぶりだった物価高が落ち着く一方で、FRBの急激な利上げにもかかわらず、景気が堅調に推移していることから、市場では軟着陸への期待が高まりつつある。
 ただ、インフレ率低下の主因はエネルギー価格安で、物価指標の過半を構成するサービス価格の鈍化スピードは遅い。高止まりする賃金上昇率を踏まえれば、6月に3.0%に下がったインフレ率が物価目標の2%まで減速するのは、「長い道のり」(パウエルFRB議長)になるとみられる。
 加えて、大幅利上げの影響が今後、実体経済に本格的に表れることで「一段の景気鈍化はほぼ確実」(FRB高官)との見方も根強く、軟着陸には不透明感が残っている。

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