海面上昇におびえる街 「毎日浸水」「かさ上げ3回」―被害が年々悪化・インドネシア

東京, 11月01日, /AJMEDIA/

気候変動の脅威にさらされている都市が、インドネシア中ジャワ州にある。地球温暖化による海面上昇の影響で、住宅地の浸水被害が年々悪化。地盤沈下も被害の拡大に拍車を掛けている。住民は床上浸水に日々悩まされたり、床のかさ上げを強いられたりしている。

 ◇消えた砂浜
 ジャワ海に面した中ジャワ州ペカロンガン市パンジャンバル地区。14日未明の満潮時刻、堤防を乗り越えた海水が勢いよく路地を駆け抜け、一帯を覆った。海水は、堤防から約20メートル離れたウィディオノさん(42)の自宅に入り込み、床上約10センチまで上昇した。プラスチック製のおもちゃがぷかぷか浮かび、玄関ドアは下部がふやけて木材がめくれていた。

 「以前は週1回だったが、8月ごろから毎日入ってくるようになった」。足首を水に浸しながら、ウィディオノさんは力なく話す。清掃員として働き、妻と子ども3人を養うのに精いっぱい。引っ越しどころか床のかさ上げ費用も工面できない。苦肉の策として昨年、砂と石にセメントを混ぜたものを寝室の床に盛って高さを20センチ上げ、しのいでいる。

 3時間ほどで水が引いた後は、清掃が待っている。「毎日毎日。時々うんざりする」。妻セティアワティさん(37)がつぶやいた。

 町内会長のダニさん(36)は「住み始めた11年前は、堤防の向こうに幅10メートルぐらい砂浜があったのに、海面が上昇して消えた」と話す。堤防はこの間2回かさ上げされたが浸水を防ぎ切れず、300世帯が大小の被害を受けているという。

 ダニさんも過去3回、自宅が50~80センチの床上浸水に遭遇。これまでに床を3回、計2メートル底上げした。「天井の低い家になった」ため、3回目は屋根も一緒に高くした。本当は移転したいが、資金がない。

 ◇8割が海面下に
 慢性化した浸水被害について、アフマッド市長は「地球温暖化に伴う海面上昇と、地下水利用による地盤沈下がもたらした」と説明する。対策として、堤防のかさ上げや排水ポンプの整備、マングローブの植林を浸水地域で推進。ホテルや工場の地下水利用を2017年から罰則付きで制限し、水道公社の供給能力拡大に努めている。

 だが、バンドン工科大学測地学研究所のヘリ所長は「30年までにペカロンガン市の8割に当たる約4000ヘクタールが海面より下に沈む」と予測する。同大の調査によれば、沿岸の海面上昇が年0.6センチに及ぶ上、地盤沈下が同10センチに達する地点があり、「最も深刻な都市」になっているという。

 市は住民移転も検討し、今年5月から国と協議を重ねているが、方向性は定まっていない。国は新型コロナウイルス対策で財政赤字を拡大させた上、津波や洪水を含めた浸水危険地域を各地に抱えている。

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