日中安定へ、岸田首相手探り 「安保」主張、「経済」協力―首脳会談

東京, 11月18日, /AJMEDIA/

岸田文雄首相は中国の習近平国家主席との17日の会談で、「建設的かつ安定的な日中関係」の構築を呼び掛けた。沖縄県・尖閣諸島や台湾など安全保障に関わるテーマは日本の立場を明確に主張し、経済分野を中心に協力の可能性を模索する方針。ただ、習政権が威圧的な態度を変える兆しは見えず、今後も手探りの対応を強いられそうだ。
 「日中関係はさまざまな協力の可能性とともに多くの課題や懸案に直面している」。首相は会談でこう指摘。東シナ海情勢などに「深刻な懸念」を伝え、環境や医療分野の協力、青少年交流の再拡大では習氏と一致した。
 日本の首相と習氏による前回の対面会談は安倍政権時代の2019年12月までさかのぼる。この約3年の間、尖閣周辺の情勢は一段と緊迫化。今年8月には中国軍が台湾を囲むように大規模演習を行い、弾道ミサイル5発を初めて日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下させた。ウクライナ危機もあり、日米欧など自由主義陣営と中国やロシアなど専制主義国の対立が際立つ。
 首相は13日の東アジアサミットで、対中国の結集軸とする「自由で開かれたインド太平洋」構想について中国の李克強首相の面前で言及し、台湾への軍事的圧力をけん制。複数の出席者も中国への不満を漏らした。同行筋は「日本が先陣を切ることで発言しやすい空気を醸成する狙いもあった」と明かす。
 首相は17日の首脳会談でも習氏に対し、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を改めて強調した。外務省幹部は「EEZにミサイルを撃ち込まれた。言うべきことは全部言うべきだ」と語る。
 習氏は14日のバイデン米大統領との会談で、台湾を「核心的利益の中の核心」と通告。台湾統一には武力行使も辞さない構えを崩さない。ただ、日中間でも主張をぶつけ合うことで互いの「レッドライン(譲れない一線)」が浮かび上がることはある。日本政府関係者は「対話を重ねれば相手の出方が見えてくる」と指摘した。
 中国は日本にとり最大の貿易相手国。気候変動など地球規模の課題は大国である中国の協力が不可欠とあって、決定的な対立は避けたいところだ。
 習氏は10月に3期目の中国共産党執行部を発足させ、国内の政治基盤はさらに強化された。17日の会談冒頭、習氏はカメラの前で笑顔を浮かべながら首相と握手を交わした。これに関し、ある日本外務省関係者は「中国側で『自分も日本と仲良くやっていいのだな』という空気が広まる」と期待を寄せる。
 だが、中国との関係は米中関係に影響されるのが実情。米国が中国との対立を先鋭化させ、先端技術や戦略物資のデカップリング(切り離し)を進めようとする中、日中関係安定は容易ではない。

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