岸田首相、強気の「ゼロ回答」 低姿勢一転、野党は攻め手欠く―予算案衆院審議

東京, 3 月1 日, /AJMEDIA/

2023年度予算案の衆院審議は、終始与党ペースで進んだ。閣僚のスキャンダルが浮上せず、野党も攻めあぐねたことが大きい。岸田文雄首相は次第に強気な姿勢を見せ、子育て予算「倍増」や防衛費大幅増額の根拠を巡る答弁では「ゼロ回答」が目立った。
「違う。政策を整理せずして数字をまず挙げろというのは無理な話だ」。首相は2月27日の質疑で、倍増の基準を示すよう再三求める立憲民主党の長妻昭政調会長に色をなして反論した。倍増の定義によって必要な予算は数兆円から20兆円と幅があるが、首相はその基準について「まず政策の中身を整理する」との答弁を繰り返した。
 首相は当初、旧民主党政権の目玉政策「子ども手当」を酷評した野党時代の自民党について「反省」を口にするなど低姿勢に徹していた。だが、審議が進むにつれ「堂々と答弁を回避」する態度が垣間見えるようになった。
 正面から疑問に答えない姿勢は防衛費の大幅増額でも同様。米国製巡航ミサイル「トマホーク」の購入予定数について「手の内は明かせない」と公表を再三拒んでいたが、22日の質疑で立民の泉健太代表から「米国ではネットで公開されている」と迫られると、「(公表を)検討する」と答弁を修正。予算案採決直前の27日になってようやく「大変関心が高い事項だ」として、「400発」と明らかにした。
 昨秋の臨時国会では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)や「政治とカネ」の問題で閣僚の「辞任ドミノ」を招いた。通常国会では予算案の審議中は首相が追及にさらされるが、今国会は閣僚の問題が下火に。ここへきて低迷していた内閣支持率に下げ止まり感が出てきたことも首相を強気にさせているとみられる。
 野党も攻め手を欠いた。少子化対策や反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有などで突っ込んだ議論が期待されたが尻すぼみに終わった。前首相秘書官の発言が引き金となったLGBTなど性的少数者に対する理解増進法案への対応など、テーマが拡散したことも背景にありそうだ。
 今国会では予算案の参院審議に加え、防衛費増額に向けた財源確保法案の審議も控える。5年間で総額43兆円に上る予算の妥当性などが焦点。6月に策定する経済財政運営の基本指針「骨太の方針」では、子育て予算の「倍増」の中身や財源の全体像を示す。
 「倍増という言葉は踊ったが、国民の不安も倍増した」。立民の泉氏は記者団にこう切り捨て、対決姿勢を強めた。

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