対中国「実利」でつなぎ留め 岸田首相、構想深化へ協力呼び掛け―アジア安保会議

東京, 6月11日, /AJMEDIA/

10日開幕の「アジア安全保障会議」(通称シャングリラ会合)の基調講演で、岸田文雄首相は日本が主導する「自由で開かれたインド太平洋」構想の深化を強調した。中国が軍事・経済両面で影響力を増す中、日本と連携するメリットを示すことで、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国や太平洋島しょ国をつなぎ留める思惑がある。
 「『自由で開かれたインド太平洋』を次のステージに引き上げていく」。首相は講演でこう宣言し、日本と共に取り組むよう呼び掛けた。
 インド太平洋地域は、激しさを増す米中対立の最前線だ。中国が過剰融資による「債務のわな」に途上国を陥らせて支配力を強める一方、米国も5月に経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を立ち上げるなど巻き返しを図る。
 ASEAN各国や太平洋島しょ国は、特定の勢力に寄りすぎない外交姿勢を伝統的に取ってきた。こうした国々でも共鳴できる「法の支配」や「航行の自由」といった普遍的な基本原則を掲げ、日本が2016年から提唱するのがインド太平洋構想だ。
 しかし、政府関係者は最近、中国の経済圏構想「一帯一路」に加わる東南アジアのある国から「日本との連携にどういう『うまみ』があるのか」と問われたと明かす。理念にとどまらない「実利」の提示を求められた格好で、インド太平洋構想が柱の一つに据える「経済的繁栄の追求」の具体化は、喫緊の課題となっている。
 首相はこうした現状認識を踏まえ、講演で「各国の主体性を尊重した経済協力を進める」と表明。威圧的な動向の目立つ中国との違いをアピールした。
 政府は今後、「質の高いインフラ」整備など経済面の支援を強く打ち出す方針。米国やオーストラリアなど同志国と連携し、中国に対抗することを目指すが、「圧倒的な物量勝負」(外務省関係者)を余儀なくされ、地域の関心を引き付けるのは容易ではない。

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