安倍氏、影響力確保に躍起 「宏池会政権」に警戒感も―自民

東京, 5月18日, /AJMEDIA/

 自民党の安倍晋三元首相の発信が止まらない。最近では「日銀は政府の子会社」発言が物議を醸した。安全保障政策や憲法改正に関しては繰り返し持論を展開、党内の保守勢力をけん引して存在感をアピールしている。岸田文雄首相率いる宏池会(岸田派)の流れをくむハト派の2派1グループを中心に連携を強めていることへの警戒感もあるようで、影響力の確保に躍起だ。
 安倍氏が会長を務める最大派閥・安倍派は17日夕、東京都内のホテルで政治資金パーティーを開催。安倍氏は「あらゆる場所で岸田政権を支える。どうか岸田首相、安心していただきたい」とあいさつした。
 政府の財政出動と日銀の金融緩和の継続を提唱する安倍氏は9日、「日銀は政府の子会社」と言い放ち、野党などから批判を浴びた。自民党関係者は「首相がアベノミクスを軌道修正しようとしていることに危機感がある。政局的には存在感発揮の思惑もあるのだろう」と指摘した。
 安倍氏が精力的に発信を開始したのは昨年11月に安倍派会長に就任してからだ。ロシアのウクライナ侵攻後は核共有の議論を「タブー視してはならない」と主張。敵基地攻撃能力の保有、防衛費の国内総生産(GDP)比2%への引き上げを訴えるなどタカ派色の強い言動が目立つ。憲法9条への自衛隊明記や緊急事態条項創設の必要性にもたびたび言及している。
 安保分野で発言を重ねる背景には、政権中枢が保守派と立ち位置の異なる勢力で占められていることがある。首相は、重要課題を麻生派会長の麻生太郎副総裁、茂木派会長の茂木敏充幹事長と相談。参院選対応は谷垣グループ代表世話人の遠藤利明選対委員長に委ねている。麻生派と谷垣グループは宏池会系で、茂木派は伝統的にタカ派色が薄い。
 松野博一官房長官と高木毅国対委員長は安倍派所属だが、安倍氏の側近ではない。同派幹部は「麻生派などに比べると、うちの派閥は首相と距離がある」と認める。
 首相在任時さながらの旺盛な発信には党内で賛否が交錯する。二階派中堅は「岸田さんの手の届かない保守を押さえられるのは安倍さんしかいない」と期待を示した。無派閥のベテランは「退陣後の首相は大所高所から発言するもの。安倍氏はやり過ぎ」と冷ややかに語った。

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