仏カンヌ映画祭「ある視点」部門 早川千絵監督「PLAN 75」上映

東京, 5月21日, /AJMEDIA/

世界3大映画祭の1つ、フランスのカンヌ映画祭で、斬新な作品を集めた部門にノミネートされた早川千絵監督の作品が上映され、観客から大きな拍手が送られました。

カンヌ映画祭は4日目の20日、斬新な作品を集めた「ある視点」部門で、日本の早川千絵監督の「PLAN 75」が上映され、早川監督と出演した俳優の磯村勇斗さんも参加しました。

「PLAN 75」は、少子高齢化が進み、75歳を過ぎた人がみずから生死を選べる制度が導入された近未来の日本を舞台にした作品です。

「男はつらいよ」シリーズなどで知られる倍賞千恵子さんが、夫に先立たれたうえ、勤務先にも解雇され、制度を利用するかどうか悩む78歳の女性を演じ、生きることの意味を問いかけます。

上映後、観客から大きな拍手が送られ、観客の男性は「難しいテーマに取り組み、勇気があると思った。すばらしい映画だった」と話していました。

早川監督はNHKのインタビューに「日本社会に対する危機感を元につくった映画で、生きていること自体が尊いということを伝えたかった。これからも焦らず、自分が表現したいこと、描いていきたいことにまっすぐ向き合っていきたい」と話していました。

また、磯村さんは「世界の人たちと一緒に同じ時間を共有でき、貴重な経験で、忘れられない瞬間になった」と話していました。

カンヌ映画祭は今月28日まで開かれ、26日にはコンペティション部門で、是枝裕和監督が韓国で製作した「ベイビー・ブローカー」が上映される予定です。

映画「PLAN 75」とは
「PLAN 75」は、少子高齢化が進んだ近未来の日本を舞台にした作品です。

社会の高齢化の対策として75歳を過ぎた人はみずから安楽死を選べる制度が導入される中、夫に先立たれ、仕事を突然解雇された78歳の女性が制度を利用するかどうか悩みながら生きる物語です。

制度の申請窓口で働く市役所の職員や、利用者が死ぬまでをサポートする女性など、それぞれの登場人物が制度に振り回されながら、自身の答えをさがし出していきます。

主役の女性を演じるのは「男はつらいよ」シリーズなどで知られる倍賞千恵子さんで、映画の主演を務めるのは9年ぶりです。
早川千絵 監督とは
カンヌ映画祭で「PLAN 75」が「ある視点」部門にノミネートされた早川千絵 監督は、ニューヨークの美術大学で写真撮影を学びながら独学で映像を撮り始め、2014年に手がけた短編映画「ナイアガラ」が国内外の映画祭で賞を受けて注目を集めました。

2018年に是枝裕和 監督が製作総指揮を務めたオムニバス映画に参加し、そのうちの1本として今回の作品の前身となる同名の短編映画の監督と脚本を務めました。

「PLAN 75」が、長編映画のデビュー作となります。
是枝監督が韓国で製作「ベイビー・ブローカー」
26日に上映される予定の「ベイビー・ブローカー」は、是枝裕和監督が初めて韓国で製作した映画で、親が育てられない赤ちゃんを匿名で受け入れる、いわゆる「赤ちゃんポスト」をテーマにした作品です。

「赤ちゃんポスト」に預けられた子どもを連れ去って売り飛ばそうとたくらむ男たちが、思い直して戻ってきた母親に見つかり、成り行きから、育ての親になってくれる人を共に探す旅に出るという物語で、血縁ではない家族の在り方を問う作品になっています。

「パラサイト半地下の家族」で主演をつとめたソン・ガンホさんや、是枝監督の過去の作品にも参加したぺ・ドゥナさんなど、韓国を代表する俳優たちが出演しています。

是枝監督が2016年ごろからあたためていた作品で、カンヌ映画祭で初めて上映されます。

日本ではことし6月24日に公開される予定です。
是枝裕和 監督とは
是枝裕和 監督(59)は、大学を卒業したあとテレビ番組の制作会社に入り、多くのドキュメンタリー番組を手がけて、ギャラクシー賞の優秀作品賞など数々の賞を受賞しました。

1995年に「幻の光」で映画監督としてデビューし、ベネチア国際映画祭の撮影賞に当たる「金のオゼッラ賞」を受賞して話題を集めました。

2004年には、親に捨てられたきょうだいがたくましく生き抜く姿を描いた「誰も知らない」で、主演の柳楽優弥さんが日本人として初めてカンヌ映画祭の最優秀男優賞を受賞し、ドキュメンタリータッチの作風と製作手法が高く評価されました。

2018年のカンヌ映画祭では、年金をあてに暮らしながら、万引きで足りない生活費を賄う家族を描いた「万引き家族」が、日本の作品としては21年ぶりに最優秀賞のパルムドールを受賞しました。

その後も、全編、フランスでロケが行われた国際共同製作の映画「真実」がベネチア国際映画祭で日本人監督の作品として初めてオープニングで上映されるなど世界を舞台に活躍し、日本を代表する映画監督の1人として実績を重ねています。

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