ネット空間「分断」深刻化 中間選挙控え陰謀論やまず―米国の民主主義に影

東京, 8月21日, /AJMEDIA/

中間選挙を11月に控えた米国で、政治・社会の対立がインターネット空間を中心に激化している。ソーシャルメディアでは、トランプ前大統領の支持者らが武装してバイデン政権と対決するよう呼び掛け、「内戦」の言葉すら飛び交う。深刻化する分断は、米国の民主主義に暗い影を落としている。
 ◇「内戦だ」
 「武器を取れ」「シビル・ウォー(南北戦争)2だ」。連邦捜査局(FBI)がスパイ防止法違反の容疑で、南部フロリダ州にあるトランプ氏の邸宅の家宅捜索に踏み切った8日、同氏が2月に公開した交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」をはじめ、ツイッターやネット掲示板には過激な投稿が相次いだ。
 トランプ氏の支持者らは今も、2020年の大統領選で大規模な不正があったとする陰謀論をSNSで発信し続けている。民主党のバイデン政権が講じた新型コロナウイルス対策にも、主に保守層が「厳し過ぎる」と強く反発。高止まりするインフレへの不満も相まって、ネット空間で「反バイデン」「反民主党」のうねりが生じている。
 ◇異なる意見排除
 高まる緊張は、中間選挙に響くのか。研究者の間では、SNSが分断を増幅する道具になっているとの見方で、ほぼ一致している。ニューヨーク大スターン経営大学院「ビジネスと人権センター」のポール・バレット副所長らは報告書で、SNSによって「分裂が激化する」と警鐘を鳴らす。
 問題視されているのは、利用者の趣向に応じた投稿を優先表示するSNS各社のアルゴリズム(コンピューターによる計算手法)だ。利用時間を伸ばし広告収入を増やす仕組みだが、似通った価値観を持つ利用者同士で共感し合って特定の考えが増幅される「エコーチェンバー現象」が生じ、異なる意見を受け入れられなくなると指摘されている。陰謀論が鎮まらない原因だ。
 ◇対策が新たな火種に
 SNSと政治の問題は、16年の大統領選にロシアがネットを通じ介入して対立をあおり、民主党の支持基盤とされる黒人やヒスパニックの投票意欲をそぐ工作を仕掛けていたことで表面化した。SNS各社は批判を受け、第三者による事実確認や誤情報の表示抑制などの対策を講じた。
 しかし、これが新たな分断の火種となった。コロナワクチンなどをめぐる誤情報の拡散は止まっていないとして、リベラル派が投稿管理の強化を迫る一方、保守派は「検閲だ」と反発。一部はトランプ氏のSNSや陰謀論を発信するウェブメディアに流れ、一段と排他的になっている。
 異なる意見を排除しようとする姿勢は、トランプ氏の支持者らによる昨年1月の連邦議会襲撃のように、法の枠を外れた実力行使に発展するリスクをはらむ。民主主義陣営のけん引役を自任する米国の不安定化は、ロシアなど対立する国家に付け入る隙を与えかねない。

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