サミット手応えも、効果見えず 政権浮揚になおハードル―岸田首相、欧米歴訪終える

東京, 1月16日, /AJMEDIA/

 岸田文雄首相は15日、欧米5カ国歴訪を終えた。5月に広島市で開く先進7カ国首脳会議(G7サミット)に向け、各国首脳と連携を確認。自身が重視する核軍縮のメッセージを発信するための地ならしに努めた。ただ、近く開幕する長丁場の通常国会は不安要素が多い。支持率が低迷する政権の反転につなげられるか、道筋は見えていない。
 首相は帰国を前に米ワシントンで内外記者会見に臨み、「国際社会を主導する責任の重さと日本に対する期待の大きさを強く感じる歴訪だった」と振り返った。
 4年7カ月の外相経験を持つ首相は外交を得意分野とする。同時に、今後の政治日程を見渡すと、首相が議長として仕切る広島サミットは「政権浮揚の数少ないチャンス」(政府筋)。準備に万全を期し、機運を盛り上げるため、今年最初の外遊先をメンバー国の仏伊英加米5カ国とし、9日未明に羽田空港をたった。
 各首脳会談では、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、G7が結束して「核兵器による威嚇とその使用」「力による一方的な現状変更の試み」に断固反対すべきだ、とする考えを表明。核軍縮をサミットで議論することに「理解と支持」を得た。バイデン米大統領とは「核なき世界」に向けた協力でも一致した。
 歴訪のもう一つの目的は、軍事的威圧を強める中国へのけん制だった。5カ国の首脳に対し、「アジアで開くサミットだからインド太平洋について議論したい」と伝達。安全保障協力の強化も打ち出した。
 具体的には、自衛隊と英軍の相互訪問時の法的地位を定めた円滑化協定(RAA)に署名。仏伊両国とは外務・防衛当局間の連携推進を決めた。ウクライナ危機に比べて東アジア安保への関心が薄い欧州勢を引き寄せておく狙いがある。
 歴訪のハイライトとなった日米首脳会談では、日本の反撃能力(敵基地攻撃能力)保有を踏まえた一体運用の強化を確認。政府高官は「だいたい目的を果たした」と語る。
 ただ、G7サミット開催は5月19~21日。それまで首相の前には難関が続く。
 今月23日召集の通常国会では、防衛力強化のための増税、「異次元の少子化対策」に必要な財源、原発政策の転換を巡り、野党が追及ののろしを上げる。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題はなおくすぶり、閣僚の不祥事などが新たに持ち上がる可能性もある。展開次第で4月の統一地方選や、同時期の実施が見込まれる衆院の補欠選挙に影響が及ぶ。
 自民党内では首相の求心力に陰りが見える。反主流派に位置付けられる菅義偉前首相は「派閥政治を引きずっている」と公然と批判。外交で手応えをつかんだ首相だが、苦しい日々が待ち構える。

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