「喪中」考慮、現状維持で再出発 主要メンバーに溝、残る火種―自民・安倍派

東京, 7月22日, /AJMEDIA/

 自民党安倍派が会長空席のまま幹部の役職を変えずに再出発したのは、会長だった安倍晋三元首相の喪が明けないうちに新体制をめぐって派内抗争へと発展する事態を避けたためだ。ただ、主要メンバーの間では、現状維持か集団指導体制に移行するかで意見が衝突。90人以上を擁する最大派閥は今後に火種を残した。
 「安倍氏の会長就任時に今の役員体制が作られた。引き継ぎたい」。塩谷立会長代理は21日の同派総会でこう強調しつつ、「一人ひとりが役職を全うし結束して進みたい」と呼び掛けた。
 総会では下村博文会長代理も「結束」に言及。約60人の出席者からは「一致団結」を求める声が上がり、提案は粛々と了承された。
 現状維持を主張していたのは塩谷、下村両氏と衛藤征士郎最高顧問だ。いずれも衆院当選9回以上のベテラン。塩谷、下村両氏は15日の会談で現体制維持を確認、自身らが派を束ねる事実上の「双頭体制」を唱えた。
 一方、同派主要メンバーのうち、塩谷氏らより当選回数の少ない萩生田光一経済産業相、松野博一官房長官と、参院安倍派の世耕弘成会長らは「世話人会」新設を主張していた。
 想定した構成メンバーは、萩生田氏ら3氏と塩谷、下村両氏、西村康稔事務総長、高木毅副会長の計7人。現職閣僚の萩生田、松野両氏は慣例で幹部ポストから外れているため、新組織で派閥運営に関与する思惑があった。対立は世代間抗争の様相も呈し始めていた。
 しかし、派内から「四十九日」や国葬も終えない中での対立を嫌う声が拡大。萩生田氏らは主張をいったん取り下げた。政界引退後も同派に影響力を残す森喜朗元首相の意向もあったとみられる。最終的に双頭体制ではなく、塩谷、下村両氏の突出を避ける現状維持と位置付けることでひとまず落ち着いた。
 混乱は当面回避されたものの、国葬後に主導権争いが再燃するとの見方は消えていない。実際、下村氏周辺は「いずれ萩生田氏らから、いろいろ動きが出てくる」とにらむ。集団指導体制移行派の関係者も、今後は下村氏の影響力が増す可能性があるとみて「専横をいかに抑えるかが大事だ」と警戒を解いていない。
 党内には、親子3代にわたって同派に所属する福田達夫党総務会長が、調整能力の評価が高く安倍氏最側近だった萩生田氏を派の後継者に推すと見る向きもある。党関係者の一人は「国葬後は派がいつ割れてもおかしくない」と語った。

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