「保護すべき難民」送還の懸念 改正入管法、政府説明で払拭遠く

東京, 6月10日, /AJMEDIA/

外国人の収容・送還ルールを見直す改正入管難民法が9日、成立した。議論の焦点となったのは、難民認定の申請が3回目以降の場合、強制送還を可能としたことだ。立憲民主党などは、日本の難民認定率の低さを理由に「本来保護するべき難民が送り返されてしまうのではないか」と再三ただしたが、政府の説明で懸念が払拭(ふっしょく)できたとは言い難い。
入管法改正案騒動で浮き彫りになる日本人の人権意識 スリランカ女性の死が問い掛けるもの

 「逮捕、投獄、拷問、虐殺。そうした迫害が待っている母国に強制送還される恐怖におびえる人たちが身近にいる」。改正法を採決した9日の参院本会議で、反対討論に立った立民の石川大我氏はこう訴えた。
 現行法は、難民認定を申請すれば回数や理由にかかわらず一律で送還手続きが止まる。政府は「申請を繰り返すことで送還を回避しようとする人がいる」と法改正の必要性を訴えてきた。
 2021年12月末時点で、送還の確定後も退去を拒む「送還忌避者」は3224人。このうち1629人が申請中だった。
 改正法は、難民条約上の難民に該当しない紛争避難民を「補完的保護対象者」(準難民)として保護する制度を新設。政府はこれにより、人道上必要な措置は対応可能としている。
 ただ、日本の難民認定率は約1%。国際水準と比べて極めて低いとの指摘が根強い。
 政府がこれに反論する根拠として引用するのが、外国人の異議申し立てを審査する難民認定参与員の柳瀬房子氏の発言だ。柳瀬氏は21年に国会の参考人質疑で「入管が見落とした難民を認定したいのに、ほとんど見つけることができない」と述べた。
 しかし、参与員が111人いる中で、柳瀬氏は21年に審査総数の約20%の1378件、22年に約26%の1231件を担当していたことが発覚。現行の難民審査の公平性にかえって疑問が付いた。
 国会審議中には、大阪出入国在留管理局の常勤医師が酒に酔った状態で外国人収容者を診察した疑惑も浮上。21年に名古屋入管で収容中のスリランカ人女性が死亡した問題を受け、施設内の医療体制見直しを進めてきたとする政府の主張が、説得力を失った感は否めない。
 改正法の成立を受け、立民の長妻昭政調会長は「政府側の立法事実は明らかに崩壊した」と非難するコメントを出した。

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