防衛財源、確保できず 「増税時期」明示回避で―自公税調

東京, 12月16日, /AJMEDIA/

 自民、公明両党の税制調査会は15日、防衛費増額の財源に、法人税、復興特別所得税、たばこ税を充てる方針を決めた。ただ、岸田文雄首相が年内決着を指示した税目、税率、実施時期のうち、増税開始のタイミングは「2024年以降の適切な時期」として明示を避けた。結局、年1兆円強を安定的に賄う税財源の確保が見通せないまま、政府は防衛力の強化へ突き進む。
 政府は23~27年度の5年間の防衛力整備費について、現行の中期防衛力整備計画(19~23年度)の約1.5倍に相当する約43兆円を確保する方針。27年度には約4兆円の追加財源が必要で、うち1兆円強は増税で賄う。
 15日にとりまとめた案では、東日本大震災の復興特別所得税の活用を巡り、税率を現行の2.1%から1%下げた上で課税期間を延長する方針を示した。被災地などの懸念に配慮し、復興財源の総額が減らないような仕組みをひねり出した格好。併せて、引き下げ分に相当する税率1%の新たな防衛目的の付加税を設ける。
 これにより、復興特別所得税の期限である37年までは、差し引きで2.1%という所得税の負担は変わらない。ただ、38年以降は本来の課税期間が過ぎた後も徴収は続く形で、防衛目的の付加税が撤廃される保証もない。個人への実質的な負担についても丁寧な説明が求められそうだ。
 一方、「防衛目的税」への実質的な転用を開始する具体的な時期については先送り。来年の自公の税制調査会で議論することになった。
 また、与党内で「14年程度」とする案が出ていた延長期間について、宮沢洋一自民税調会長は15日、最長で13年との認識を示した。防衛費への転用が遅れれば復興財源に全額を充当できる期間が伸びるため、延長期間が短縮される。ただ、遅れた分だけ防衛財源には不足が生じ、改めて財源確保の方策が課題となる。
 法人税についても、来年以降の世界的な景気後退が懸念される中、実際に増税を求めることができるのかは不透明だ。来年の税制改正論議の行方次第では、安定財源を欠いたまま防衛力整備だけが先行する事態になりかねない。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts