都市部の「複業」人材呼び込み 島根モデル、新たな働き方―国も新制度で後押し

東京, 1月4日, /AJMEDIA/

 働き手の不足が深刻な地方で、都市部の若者らを呼び込み、季節ごとに複数の異なる「複業」を提供する取り組みが注目されている。人口減少が進む島根県内の自治体が独自に始めた新しい働き方で、総務省も「島根モデル」をベースに支援制度を構築。2022年12月時点の認定組合は全国で66団体に上っており、雇用創出や地方移住への期待も高まっている。
 モデルとなったのは島根県の離島、海士町。町では、繁忙期が宿泊業は観光シーズンの7~9月、農業は収穫期の9~11月など業種によって異なり、年間を通じて雇用するには人件費がかさむという問題を抱えていた。そこで、観光協会が職員を数カ月ごとに複数の現場に派遣し、人手を確保する取り組みを始めた。
 総務省は同町を参考に20年6月、都道府県の認定を受けた組合に加盟する事業者と、都市部から来た若者をマッチングする「特定地域づくり事業協同組合制度」を導入。組合は法制化し、地元自治体から財政支援を受けられる仕組みとした。
 同町の「海士町複業協同組合」は同年12月、全国で初認定。加盟事業者は現在22団体で、定置網漁や水産加工業、宿泊業など業種もさまざまだ。
 組合には20~30代を中心にこれまで11人が所属。給与は時給制で、事業者を通じ、組合が支払う。町は若者らが組合で数年働いた後、就職と定住を促す。既に4人が組合を「卒業」し、うち2人が町内で漁業と宿泊業に就いた。町には全国の自治体が視察に訪れており、担当者は「やりたいことを見つけてから定職に就ける」とメリットを話す。
 海士町の取り組みは県内の他の自治体にも広まり、県内の認定組合は10団体。特色ある組合も生まれている。浜田市では、若手音楽家に特化した組合を設立し、21年4月から派遣事業を始めた。組合には4団体が加盟し、7人が所属。障害福祉施設や保育所での演奏、コンサート活動などを行っている。
 ただ、組合の設立には地元事業者の理解や協力が欠かせない。いかに良い人材を呼び込むかも課題で、市町村からは「軌道に乗るまでが大変だ」との声も漏れる。そこで島根県は、組合の立ち上げ経費への支援金制度を導入。22年度は100万円を上限に設定しており、コロナ禍で地方移住への関心が高まっていることも踏まえ、組合の設立を後押しする。
 自治体にとっては、職員の住まいの確保も悩みの種だ。海士町は「仕事はあるが家がない」状態で、空き家の整備を急ぐ。22年6月に認定を受けた隠岐の島町は、町内に実家がある若者のUターンを想定。任期を終えた地域おこし協力隊員にも声を掛けたい考えだ。

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