自民、主戦場1人区に注力 物価高批判、安保で対抗―比例「野党第1党」も焦点

東京, 6月24日, /AJMEDIA/

 参院選が公示され、18日間の選挙戦が始まった。政権の安定が懸かる自民党は岸田文雄首相(党総裁)と4役を、全体の勝敗を決する「1人区」に投入。物価高騰が国民生活を直撃し、政府批判の声が高まる事態に懸念が出る中、安全保障への取り組みをアピールして支持を訴える。野党側は共闘が事実上崩壊。立憲民主党と日本維新の会による比例代表での改選第1党争いが焦点となっている。
 ◇チャンス
 22日午前、福島市郊外にある青果物直売所の駐車場。第一声に臨んだ首相は「政治の安定を得て未来を切り開く」と力を込めた。福島での総裁遊説スタートは自民党の定番。復興が道半ばの福島を重視する姿勢を見せることで、苦境にある国民に寄り添う方針を示す意図が透ける。
 この日、首相は岩手、宮城でも街頭演説。茂木敏充幹事長は三重、高市早苗政調会長は長崎から遊説を始めた。いずれも32ある改選数1の1人区だ。
 複数区や比例は獲得議席に比較的差がつきにくいというのが一般的な見方。自民党は2013年参院選の1人区で29勝したが、野党候補が一本化された16年は21勝、19年は22勝にとどまった。今回、一騎打ちは11だけ。党関係者は「チャンスだ」と語った。
 ◇危機感
 首相は第一声で物価高をめぐり「ロシアのウクライナ侵略によって世界規模で引き起こされている。有事の価格高騰だ」と指摘。安全保障に関し、「国民の命や暮らし、平和を守るには一国では十分でない。首脳外交を進める」と語った。
 報道各社の世論調査で6月の内閣支持率は軒並み下落に転じた。政府の物価対策への評価が低く、野党は「岸田インフレ」として照準を絞る。首相は公示前日の21日に物価や賃金に関する政府対策本部を初開催し、支援策を発表した。第一声でロシアの侵攻に言及して「外的要因」を強調したのは、危機感の裏返しだ。
 首相は近く、先進7カ国首脳会議(G7サミット)と北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席するためドイツとスペインを訪問する。いずれもウクライナ情勢が主なテーマで、NATO首脳会議参加は歴代首相で初めてだ。
 外遊期間は5~6日間の方向。選挙期間の約3分の1にわたり国内を空ければ、首相がてこ入れできる選挙区はそれだけ限られる。だが、ウクライナ危機は中国による近年の威圧的行動と結び付き、国民の間には東アジア波及への不安が広がる。自民党幹部は「報道が首相の言動に集中すれば選挙にプラスだ」との見方を示した。
 ◇本格野党
 「『岸田インフレ』と訴えたら、政府は対策本部をつくった。言わなかったらやらなかった」。立民の泉健太代表は22日、青森市内の街頭演説で自らの「成果」を誇示。この後、維新が比例で野党第1党を目指していることについて記者団に問われ、「自民党とがっぷり四つに組む本格野党は立民だ」と語気を強めた。
 旧民主党の中でもリベラル寄りの勢力が立民の中心だ。これに対して維新は保守陣営に位置付けられる。維新の発言力が増せば、憲法改正論議を含め国会の風景は変わりそうだ。
 立民を取り巻く状況は容易ではない。昨年の衆院選では共産党との共闘を自民党に攻撃されて敗北。その反省から今回は共産党と一定の距離を置いたため、10の1人区で競合することになった。
 一方の維新は昨秋の衆院選の躍進を追い風に、今回の参院選を全国政党化の足掛かりとしたい考え。松井一郎代表は本拠地・大阪市の繁華街で演説し、夏に予想される電力不足に関して「立民はいまだ原発再稼働に反対と言っている」と批判した。

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