緩和「出口」、最大の課題に 共同声明見直しも―日銀総裁候補に植田氏

東京, 2月12日, /AJMEDIA/

 政府は4月に任期満了を迎える日銀の黒田東彦総裁の後任に経済学者の植田和男氏を起用する方針を固めた。植田氏は黒田総裁が推進してきた大規模な金融緩和を引き継ぐ形となるが、副作用も顕著だ。就任後、大規模緩和を終わらせる「出口戦略」が最大の課題となる。併せて、2%の物価上昇目標を明記した共同声明の見直しも議論されそうだ。
 日銀の現在の金融緩和の枠組みは、金融機関が日銀に預け入れる当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を適用する「マイナス金利政策」と、10年物国債の利回りを0%程度に誘導する「長期金利操作」が柱。これら低金利政策により景気を下支えし、賃金と物価が持続的に上昇する経済の好循環を目指している。
 ただ、金利を低く抑えるために大量の国債購入を続けた結果、債券市場のゆがみが拡大。国債保有額は昨年末で約560兆円と発行総額の半分を占め、財政規律の緩みも懸念されている。さらに昨年は、利上げを進める米欧との金利差が拡大したことで急速な円安が加速。輸入物価の上昇に拍車を掛けたと批判が高まった。
 市場では、いずれ大規模緩和の修正が必要になるとの見方が支配的。マイナス金利政策の解除のほか、長期金利の誘導目標の引き上げや枠組み自体の撤廃などが取りざたされており、次期総裁の対応が焦点となっている。
 もっとも、日銀が緩和策を修正し利上げに踏み切ると、住宅ローンや企業の借入金利が上昇し、景気に打撃を与えるリスクがある。このため植田氏は、当面は金融緩和を継続するとみられる。その上で、効果と副作用を見極めながら「正常化を慎重に進めていく」(野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト)と予想される。
 一方、現在の大規模緩和策の根拠ともなっている共同声明の扱いも注目される。政府・日銀は2013年1月、上昇率2%の物価目標を明記した共同声明を公表。同年3月に就任した黒田総裁は異次元緩和を断行してきた。
 共同声明を巡っては、産学の有識者で構成する「令和国民会議(令和臨調)」が先月、「できるだけ早期」とする2%の物価上昇達成を「長期的な目標」に見直すべきだとする緊急提言を発表。日銀により柔軟な政策運営を求めた。岸田文雄首相は声明の見直しについて「新総裁が決まっていない時点では控える」としているが、次期総裁候補が固まったのを受け、議論が進みそうだ。

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