法人税率、引き上げ案が浮上 積極投資は減税拡充―経済構造転換狙う・与党税調

東京, 5月19日, /AJMEDIA/

 与党の税制調査会で、法人税の実効税率を引き上げる案が浮上していることが18日、明らかになった。併せて、設備投資などに対する減税措置も拡充。増税と減税を組み合わせることで企業にも「貯蓄から投資」を強く促し、日本経済の構造転換を後押しする。与党税調幹部は2023年度の税制改正を見据え、政府側と検討を進めたい考えだ。ただ、企業業績には不透明感が強まっており、経済界が難色を示す可能性もある。
 実効税率の引き上げが実現すれば1984年以来となる。法人税率をめぐっては昨年、経済協力開発機構(OECD)主導で最低税率を設定することで国際合意が成立し、世界的な引き下げ競争に歯止めがかかってきた。バイデン米大統領も税率引き上げを提案しており、新型コロナ対応で財政赤字が拡大した各国で政策を転換する動きが出ている。
 現在、法人税(国税)と法人事業税(地方税)などを合わせた法人実効税率は29.74%。政府は2015年度以降、企業が減税分を賃上げや設備投資に回すと期待し、34.62%だった税率を段階的に引き下げてきた。
 これに対し自民、公明両党は昨年12月にまとめた22年度税制改正大綱で、税率引き下げにより企業の内部留保は増加したものの、投資拡大など「意図した成果を挙げてこなかった」と指摘。その上で「企業の行動変容を促すためにどう対応するか幅広く検討する」と、民間資金を投資に誘導する仕組みづくりを示唆していた。
 今回は増税額と減税額が同規模となる仕組みを想定。税調幹部は「大幅には引き上げられないが、日本の実態に合った構造転換は必要だ」と訴える。
 ただ、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う原材料価格の高騰で、企業業績は今後厳しさを増す可能性がある。また設備投資の規模は業種によってばらつきが大きく、サービス業など減税措置の恩恵が限られる業界は差し引きで増税となる恐れがある。大企業を中心とする黒字企業などからは強い反発も予想され、実効税率の引き上げが実現するかは不透明な情勢だ。

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