日本の去年1年間の名目GDP ドイツに抜かれ世界4位に後退

東京, 02月16 /AJMEDIA/

日本の去年1年間の名目のGDP=国内総生産は、ドル換算でドイツに抜かれて世界4位になりました。

長年にわたる低成長やデフレに加えて、外国為替相場で円安が進みドルに換算した際の規模が目減りしたことも影響しました。
名目GDP 4兆2106億ドル(去年1年間)
内閣府によりますと、日本の去年1年間の名目GDPは、平均為替レートでドルに換算すると4兆2106億ドルでした。

一方、ドイツの去年1年間のGDPは、4兆4561億ドルと日本を上回りました。

日本の経済規模は、1968年にGNP=国民総生産で当時の西ドイツを上回って、アメリカに次いで世界2位となりました。

その後、2010年にGDPで中国に抜かれ、世界3位が続いていましたが、去年、人口がほぼ3分の2のドイツに逆転され、4位となりました。

日本では1990年代にバブル経済が崩壊して以降、長年にわたって低成長やデフレが続き、個人消費や企業の投資が抑えられてきました。

また、円安ドル高の影響で、日本のGDPをドルに換算すると目減りすることや日本に比べて物価上昇率が高いドイツは名目のGDPの伸びがより高くなることも影響しました。

去年10~12月のGDP 年率-0.4% 2期連続でマイナス
去年10月から12月までのGDP=国内総生産は、前の3か月と比べた実質の伸び率が年率換算でマイナス0.4%と2期連続でマイナスとなりました。

物価高の影響で食料品などの購入が減ったほか、サービス業も振るいませんでした。

内閣府が15日発表した去年10月から12月までのGDPの速報値は、物価の変動を除いた実質の伸び率が前の3か月と比べてマイナス0.1%となりました。

これが1年間続いた場合の年率に換算するとマイナス0.4%となり、2期連続のマイナスです。

個人消費 前の3か月と比べてマイナス0.2%
伸び率がマイナスとなった主な要因は「個人消費」で、前の3か月と比べてマイナス0.2%でした。

物価高の影響で食料品の購入が減ったほか、冬物の衣料の販売も落ち込みました。

外食や旅行など、サービス消費も減少しました。

また、企業の「設備投資」がマイナス0.1%。「住宅投資」もマイナス1.0%でした。

輸出 前の3か月と比べて2.6%プラス
一方、「輸出」は前の3か月と比べて2.6%のプラスでした。

統計上「輸出」に含まれる外国人旅行者による国内での消費、いわゆるインバウンド需要が増えたほか、多額の特許料が海外から支払われたことも輸出の伸びを押し上げました。

合わせて、去年1年間のGDPも公表され、実質の伸び率はプラス1.9%と3年連続でプラスとなりました。

また、物価の上昇を加味した名目はプラス5.7%と、1991年のプラス6.5%以来の高い水準となりました。

物価高で貯蓄減少し 消費伸びなかったか
今回は、GDPの半分以上を占める「個人消費」がマイナスとなるなど、力強さを欠く状況が改めて確認されました。

新型コロナの感染拡大前の2019年、個人消費は物価の変動を除く実質で300兆7000億円あまりでしたが、2020年は4%下回る287兆3000億円あまりまで落ち込みました。

その一方で、外出や消費を控えざるを得ない中、所得に対しどのくらい貯金しているかを示す「貯蓄率」が高まりました。

内閣府によりますと、コロナ前の2019年におよそ3%だった貯蓄率は、2020年には現金10万円が一律で給付されたこともあって11%近くまで伸び、家計の貯蓄の増加につながりました。

去年5月に新型コロナが5類に移行すると、社会・経済の正常化が進み、こうして増えた貯蓄が消費を後押しすると期待されました。

ところが、去年1年間の個人消費は実質で297兆7000億円あまりと依然としてコロナ前の水準に届いていません。

専門家の間では消費の回復が期待された時期に物価高が続いたことで、コロナの時期に増えていた貯蓄が物価高への対応に回り、実質で見た場合の消費は拡大しなかったという指摘も出ています。

ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎 経済調査部長は、「物価高で貯蓄する分のほとんどを減らさないといけない状況になって消費を増やせなくなってきた。貯蓄が仮になければもっと消費が落ちててもおかしくなかった」と指摘します。

その上で斎藤さんは、「ことしの春闘は、高水準の賃上げが期待されている。賃上げが進んでいけば持続的な所得の増加につながるので、重要なポイントだ」と話していました。

なぜドイツに抜かれたのか?
日本は、高度経済成長が続いていた1968年に当時の西ドイツを抜いてアメリカに次ぐ世界2位の経済大国となりましたが、2010年には「世界の工場」として急成長した中国に抜かれて3位に後退。

その後は、米中に大きく水を開けられ、去年は、人口が8400万人と日本のほぼ3分の2のドイツに逆転される形となりました。

【円安と物価上昇】

要因の1つは、為替相場と物価上昇率の影響です。

円相場は2011年には一時、1ドル=75円台をつける円高水準でしたが、去年は平均で1ドル=140円台まで値下がりしています。

円安が進むとGDPを円からドルに換算する際、目減りすることになります。

また、名目GDPは物価の変動に左右されます。

ドイツでは去年、物価の変動を除いた実質のGDPの成長率はマイナス0.3%でしたが、ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあってエネルギーなどを中心に物価が高騰したことから、名目のGDPはプラス6.3%となりました。

こうした事情もあって、IMF=国際通貨基金は、各国の経済力を比較する場合、物価の変動を除いた実質の成長率などさまざまな指標を確認する必要があるとしています。

【国内の消費・投資伸びず】

一方、日本では1990年代のバブル経済の崩壊以降、長年にわたって低成長やデフレが続いてきたことも今回の逆転の背景にあると指摘されています。

賃金が十分に上がらず個人消費が伸び悩んだほか、企業も国内への投資に慎重な姿勢を強めました。

「輸出大国」を支えた製造業では、貿易摩擦や円高の影響で海外向けの製品を現地生産にシフトする動きも進みました。

日本の名目GDPのうち、「設備投資」の伸び率は、1988年にはプラス16.5%でしたが、去年はプラス4.6%にとどまっています。

【生産性の低迷】

そして、どれだけ効率的に製品やサービスを生み出すかを示す生産性の低迷も続いています。

日本生産性本部のまとめでは、日本の1時間あたりの労働生産性は、おととし2022年、OECD=経済協力開発機構の加盟国、38か国中30位。

比較可能な1970年以降で最も低い順位となり、11位だったドイツに差をつけられています。

とりわけサービス業は、製造業に比べてデジタル化や省人化が十分に進んでいないと指摘されています。

また、政府が打ち出してきた成長戦略や構造改革もなかなか実を結ばず、国の経済の実力を表すとも言われる「潜在成長率」も伸び悩みました。

OECDによりますと、2022年の各国の潜在成長率は、
▼アメリカが1.9%、
▼ドイツの0.8%に対し、
▼日本は0.6%にとどまっています。

IMFが去年10月に公表した試算では、日本の名目GDPは再来年・2026年には、人口14億人のインドに抜かれて世界5位となる見通しとなっています。

日本では、今後、さらなる人口減少も予想される中、成長率の引き上げに向けて投資の拡大や生産性の向上にどう取り組んでいくのかが急務となっています。

専門家「賃上げで所得が増え 消費するという好循環を」
ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎 経済調査部長は、日本の去年の名目GDPがドル換算でドイツを下回ったことについて、「日本企業は収益が伸びてきたが投資や賃金に回さなかった。ただ、企業が悪いわけではなく国内で消費が伸びなければ国内で設備投資する動機がなくなり、むしろ海外に投資してしまう。その状況が続いたことが、30年間の日本の停滞の原因だ」と指摘しました。

そのうえで、「ドイツと日本の共通点の1つは製造業が強いことだが、この30年を比較すると、ドイツの方が競争力を高めて成長に貢献してきた。職場に直結するような技術や知識を徹底的に教え込むようなシステムがしっかりしていたことも要因ではないか」と話しています。

そして今後の日本経済に必要なことについて、「所得が増えてそれを消費するというような循環を作っていかないと、経済は成長しない。ことしの春闘で賃上げが進んでいけば、持続的な所得の増加につながるので重要なポイントになる」と話していました。

日本商工会議所 小林会頭「“購買力平価” での比較が望ましい」
日本の去年1年間の名目のGDP=国内総生産がドイツに抜かれて世界4位になったことについて、日本商工会議所の小林会頭は、15日の記者会見で、購買力平価を指標に比較することが望ましいという考えを示しました。

会見で小林会頭は、「順位が変わったことを受け止める必要はあるが、一番フェアなのは購買力平価で比較することだ。日本がドイツなどに比べて経済成長率や失業率などどれかが非常に落ち込んでいるわけではない」と述べ、同じ商品をそれぞれの国でいくらで購入できるかで比較するいわゆる購買力平価で見ることが望ましいという考えを示しました。

また、GDPが転落した主な原因は為替だとしたうえで、「為替が130円台に入れば逆転するだろう。日米の金利差があまりにも大きくて長期化していることが一番の問題で、ここを動かさなければなかなか為替はもとに戻らない」と述べ、日銀の金融政策を注視する考えを示しました。

新藤経済再生相「賃上げが物価上昇に追いつかず 個人消費低迷」
去年10月から12月までのGDP=国内総生産の伸び率が2期連続のマイナスとなったことについて、新藤経済再生担当大臣は記者会見で「賃金の上昇が物価上昇に追いついていない中で個人消費が力強さを欠いている。設備投資は計画は非常に前向きで積極的だが実現に時間がかかっている。こうした状況を改善し、後押しするための経済対策の効果ができるだけ早く経済に反映できるよう努力をしていきたい」と述べました。

また、去年1年間の名目のGDPがドル換算でドイツに抜かれたことについて、新藤大臣は「日本がさらなる構造改革を行い新しく経済成長できるステージを一刻も早く作らなければいけない。世界の国々は物価が上がり、それに見合う賃金の上昇で経済を成長させていくことを実現している。私たちもまさに今その転換点にある」と述べました。

林官房長官「所得増が物価上昇上回る状況作り出し 消費拡大へ」
林官房長官は午後の記者会見で、「アメリカドル換算のGDPは物価や為替レートの動向に大きく影響を受けることから留意が必要だが、バブル崩壊以降、企業は投資を抑制し、結果として消費の停滞や物価の低迷、さらには成長の抑制がもたらされたと考えている」と指摘しました。

その上で「足元では30年ぶりの水準の賃上げや設備投資、株価など明るい兆しが出てきており、この流れをさらに加速させて所得増と成長の好循環を実現することが重要だ。所得の伸びが物価の上昇を上回る状況を確実に作り出して消費の拡大につなげる」と述べました。

ドラッグストア 食品の売り上げ増
物価上昇の中、食品の販売を伸ばしているのが、ドラッグストア業界です。

ドラッグストア大手の「ウエルシアホールディングス」では、医薬品や化粧品の販売で一定の利益を得られる分、食品については利幅を抑え、割安な価格で販売することで集客につなげる戦略をとっていて、既存店での食品の売り上げが、去年11月までの9か月間で前の年の同じ時期より5%増えています。

食品へのニーズをさらに取り込もうと、埼玉県新座市内の店舗では、去年12月に食品の取扱品目の数をこれまでの1.5倍のおよそ1万2000点に増やしました。

その結果、店の1月の食品の売り上げは、前の年の同じ月よりおよそ20%増え、特に複数個をまとめて1個あたりの価格を抑えたレトルト食品や、税込み300円台から取りそろえている弁当などの販売数量が伸びているということです。

店を訪れた70代の客は、「食品だけでなく電気代やガソリン価格など全般的にいま値上がりをしているから、毎日食べる食品はここで安いものを買って節約しています」と話していました。

民間の調査会社「インテージ」が全国で5万人余りを対象に、生鮮と総菜を除く食品の月ごとの購入金額を業態別で調べたところ、1月はコロナ禍前の2019年の平均と比べ、スーパーが3%ほどの増加だったのに対し、ドラッグストアはおよそ31%増加し、ドラッグストアで食品の販売が大きく伸びていると分析しています。

ウエルシア新座野火止店の橋本和也店長は、「いま物価高に加えなかなか賃金も上がらないので安くてもおいしい商品を求めるお客さんは増えていると思う。生鮮食品などもそろえて食品コーナーを充実させ、生活に欠かせない商品を何でも買えるようにすることでスーパーからドラッグストアへお客を取り込んでいきたい」と話していました。

思い切った値上げと賃上げでサービス向上
個人消費の回復に欠かせない、物価の上昇を上回る賃上げ。サービス価格を思い切って値上げし、社員の賃上げにつなげている中小企業があります。

福岡市内を中心に8つの美容室を展開する「Votan」。2012年に創業し、社員55人の平均年齢は24歳です。

会社は、売り上げに応じて支給額が変わる歩合制を採用していますが、ことし4月に美容師の基本給を11%から18%引き上げます。

このうち、技術力が認められた「スタイリスト」の基本給は、いまの20万8000円から3万8000円上がって24万6000円になります。

賃上げの原資は、サービス価格の思い切った値上げにありました。

去年7月、ヘアカットの料金を5500円から7000円に、ヘアカラーの料金を6000円から9000円にアップさせたのです。

大空将社長(39)は、「物価が上がっている中で、従業員スタッフが未来をしっかり見ていけるような値段設定にする。スタッフの満足度を高めていけるようにという思いで、料金を上げさせてもらった」と話します。

これまでサービス業は、客離れのおそれなどを理由に、賃金の上昇分を価格転嫁しにくい傾向があると指摘されてきました。

この会社では、値上げ後に大幅な客の落ち込みはなかったものの、新規の客が減るなどの影響が店舗のデータから読み取れたということです。

ただ、接客数の減少を逆手にとり、それぞれの美容師に生まれた、いわば“隙間時間”を有効活用することにしました。

例えば、マネキンを使ったカットの練習。

以前は営業開始前や終了後に行っていましたが、日中の隙間時間に集中して取り組むことで、効率的にスキルを高めてもらう効果を狙っていると言います。

働き方改革との両立にもつながっているということです。

入社1年目の21歳の美容師は、「顔の周りの髪に流れを作ることが苦手ですが、料金改正のあと、お客さんが落ち着いて空き時間ができたので、レッスンにあてています」と話しています。

一方、常連客の25歳の女性は、「値上げとなると、少し『あぁ』と思いますが、仕上がりや接客は金額以上だと思っています」と話しています。

会社では、この春、25人の新入社員を迎えます。

今後、東京や熊本にも新たな店舗を開き、値上げと賃上げ、それにサービス水準の向上を通じて事業の拡大を目指したいとしています。

大空社長は、「美容師のなり手も減っている状況なので、少しでも安定して働き、お客様のご要望に安定して応えられる環境にしたい。やる気のある美容師の卵が入ってくれば、企業の展開にもつながっていく」と話しています。

経済指標で比べる日本とドイツ
日本とドイツをさまざまな経済指標から比べてみます。

【競争力】

スイスのビジネススクールIMDが発表した2023年の「世界競争力ランキング」。経済状況やビジネス、政府の効率性などをもとに順位が決められています。

調査対象の64の国と地域のうち、ドイツは22位となりました。

一方、日本は35位で、過去最低を更新しました。

2019年からの5年間でみると、ドイツは2年連続17位から2年連続で15位、そして去年22位となっています。

日本はこの5年間では30位が最高で、おととしと去年は34位と35位でした。

【労働生産性】

労働生産性とは、労働者1人当たり、あるいは労働1時間当たりで、どれだけの成果を生み出したかを示す指標です。

「日本生産性本部」によりますと、2022年のドイツの労働生産性は、1時間当たりで87.2ドルと、G7=主要7か国の中ではアメリカに次ぐ2位につけています。

一方、日本は1時間あたり52.3ドルで、G7では最下位が続き、記録のある1970年以降で最も低くなっています。

【輸出額】

日本とドイツはともに製造業が盛んな国ですが、ドイツは輸出額が日本より大きく、また、伸びているという特徴があります。

OECD=経済協力開発機構によりますとドイツの2022年のモノの輸出額は、1兆6000億ドル余りとなっています。

日本は7400億ドル余りで、ドイツの輸出額は日本を2倍以上上回っています。

2000~2022年までの輸出額の推移では、日本がおよそ1.5倍増えているのに対してドイツはおよそ3倍に増加しています。

【実質賃金の伸び】

率内閣官房の2021年の資料によりますと、1人当たりの実質賃金の伸び率は、1991年から2019年にかけてイギリスが1.48倍、アメリカが1.41倍、ドイツが1.34倍に上昇しているのに対して、日本は1.05倍にとどまっています。

【男女間の賃金格差と管理職に占める女性の割合】

内閣官房が2022年に発表した資料によりますと、男女の賃金格差は、日本は22.5%と、G7で最も高い状態です。男性に比べて女性の賃金が低いことを意味します。

ドイツはイタリアの7.6%、フランスの11.8%よりは高いものの、13.9%と、G7でちょうど真ん中ぐらいとなっています。

また、管理職に占める女性の割合は、日本はおよそ13%とほかの先進国と比べて低い水準となっています。

ドイツは日本に次ぐ低さですが、それでもおよそ28%と、日本の2倍以上です。

アメリカはおよそ41%、イギリスはおよそ36%となっています。

ドイツ経済 強さの秘密
ドイツは1990年に東西ドイツが統一したあと、旧東ドイツ地域の産業の再生が難航し、雇用も悪化。2000年代にかけて景気低迷が続いて、「欧州の病人」と呼ばれました。

転機となったのは、1998年から2005年まで続いたシュレーダー政権の政策です。

労働市場と税や社会保障の構造改革に着手し、就労促進や労働需要と供給のミスマッチの解消に努め、経済が長期的に安定軌道に乗りました。

ドイツが名目GDPを伸ばした背景には、ドイツの地方政府と国が、企業活動を支援するために行ってきたさまざまな施策が効果をあげていることがあります。

【理由1 地方政府の支援策】

企業の競争力強化に大きく貢献しているのが地方政府です。

州政府が100%出資する「経済振興公社」が企業の輸出を支援します。

企業向けに補助金を出し、月に1度、地元企業を世界中の見本市に参加させたり、外国企業との橋渡し役を行ったりして、海外販路の開拓を後押ししています。

【理由2 国の産業政策】

また、ドイツ政府は2013年に製造現場にデジタル技術を導入するプロジェクト、「インダストリー4.0」を発表。

官民をあげて取り組んだ結果、工場の稼働率が上がり、生産の効率化が進みました。

また、別のプロジェクトのもと、労働者に対して定期的に教育・訓練を行い、スキルの向上を図っています。

こうした支援によって、ドイツの製造業の多くは海外よりも国内に生産拠点を残すほうが有利だと判断し、雇用を生み出しつつ、高付加価値商品を生産・輸出する技術力やノウハウを培っていきました。

【理由3 EUとユーロ】

さらに、およそ4億5000万の人口があるEU=ヨーロッパ連合の市場では、関税がかからずに域内に商品を輸出できるほか、同じユーロ圏内では為替レートの影響を受けないなどの利点があり、経済成長の追い風になっています。

こうしたことが積み重なり、ドイツは輸出が力強く経済成長を支えているほか、1時間あたりの労働生産性は、G7=主要7か国の中ではアメリカに次ぐ2位につけています。

一方、ドイツはこれまでロシアからの価格の安い天然ガスを輸入することで競争力を維持してきましたが、ウクライナ侵攻後は安価なロシア産ガスの調達が難しくなり、エネルギー価格が高騰し、企業活動が打撃を受けました。

また、これまで依存を高めてきた中国経済は減速しているうえに、安全保障上の観点から、中国への依存度を下げていく「デリスキング」の必要性に迫られています。

足元、去年10月から12月のGDP=国内総生産の実質の伸び率は、前の3か月と比べてマイナス0.3%、去年1年間の実質のGDPの伸び率も前の年と比べてマイナス0.3%でした。

景気低迷が続き、ことしもマイナス成長に陥るとの見方も出ています。

国内生産を重視するベンツ
ドイツを代表する大手自動車メーカー、メルセデス・ベンツグループは、7つある自動車工場のうち3つがドイツ国内にあり、2022年の総生産台数のおよそ40%を占めています。

グローバルに自動車生産を展開していますが、ドイツ国内での生産も重視してきました。

主力のブレーメン工場では数多くのロボットが稼働していて、生産効率を高めています。

また、将来を見据えEV分野への研究開発や工場の電動化、デジタル化を加速させています。

2022年から2030年までにEV化やデジタル化に対応するため、13億ユーロ以上、2000億円余りをドイツ国内の社員の能力開発や訓練などに投じると説明しています。

メルセデス・ベンツグループのエッカルト・フォンクレーデン渉外部長は、「われわれは世界的に展開しているが、ドイツは依然として重要だ。売り上げのおよそ10%を占め、3番目の市場となっている。また、『メイド・イン・ジャーマニー』は、ブランドの根幹で高品質の保証だ」と話しています。

フォンクレーデン渉外部長は、ドイツはほかの国と比べ人件費が高いといった課題がありながらも、行政からの支援や世界的に知られる研究機関との協力など、生産や投資を続けるメリットも多いと指摘します。

フォンクレーデン渉外部長は、「ドイツがビジネス拠点として成功してきたのは政治家と企業、そして経済がいい形で協力関係にあったからだと思う。ドイツの人件費は高いが、それを上回る、研究資金、税法、イノベーションの促進、税の優遇措置といったメリットもある。そうしたものがあるからこそ投資を続ける価値がある」と話していました。

さらに、労働者の教育・訓練については、「ドイツで特徴的なのは熟練労働者向けに国と企業で二元的に行う職業訓練の仕組みがあることだ」と指摘しました。

ドイツ市民「実感がわかない」
ドイツでは物価の高騰が続き、直近の経済成長は低迷していることから、首都ベルリンで街の人に話を聞くと、「実感がわかない」などという声が多く聞かれました。

このうち、20代の男性は、「実感はどちらかというとないです。3位になったこと自体知りませんでした。スーパーマーケットでものの値段が高くなってきてますし、それが理由で経済が成長している可能性もありますが、個人的には生活はちょっと苦しくなってきています」と話していました。

70代の男性は、「日本を抜いたというのは実際どうかは知らないですが、信じがたいですね。日本の株式市場を見てても、好調だと思います。ドイツの状況が日本よりいいかは疑わしいですね」と話していました。

20代の女性は、「実感はあまりないです。インフレによって物価が上がって、お金をどう使うか、管理が大事になってきています」と話していました。

イギリスGDP 2期連続マイナス
イギリスの去年10月から12月までのGDP=国内総生産が発表され、前の3か月と比べた伸び率はマイナス0.3%と2期連続のマイナスとなりました。

高い金利水準を維持していることが経済の縮小につながっています。

イギリスの統計局は15日、去年10月から12月までのGDPを発表しました。

それによりますと、前の3か月と比べた実質の伸び率はマイナス0.3%となりました。

2期連続のマイナスとなり、市場予想のマイナス0.1%も下回る結果となりました。年率に換算すると、マイナス1.4%となります。

主な要因としては、「建設業」で1.3%減少したほか、製造業などの「生産部門」で1.0%減少したためです。

インフレを抑え込むため、中央銀行のイングランド銀行が高い金利水準を維持していることが経済の縮小につながっています。

また、合わせて発表された去年1年間のGDPの伸び率は、前の年と比べてプラス0.1%となりました。

新型コロナの感染拡大直後を除くと、2009年以来の低成長となります。

ハント財務相は今回のGDPについて、インフレの抑制が最優先事項だと強調した上で、イギリス経済が曲がり角に差し掛かっている兆しはあるとのコメントを発表しました。

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