新品種の権利保護へ管理機関 ブランド農産物、流出に歯止め―政府

東京, 7月11日, /AJMEDIA/

 人気の高級ブドウ「シャインマスカット」など、苦労の末に品種改良したブランド農産物の種や苗が無断で海外に持ち出されるケースが後を絶たない。「海賊版」が現地で出回れば輸出拡大の妨げにもなるため、政府は開発者の権利を保護する機関の設立に向けた検討を急ぐ。農林水産省は8日、2023年度中の創設を目指す考えを示した。
 国内で20年度に登録された農産物は約300品種。農水省によると、このうち優良品種は「ほぼ海外流出している」(幹部)状態だという。
 新品種の開発者には、発明品の特許と同じように「育成者権」と呼ばれる知的財産権が認められるが、無断流出すれば正当な見返りを受けられない。対価を支払って栽培している国内農家は輸出の機会を奪われ、政府が旗を振る農産物の輸出拡大にも逆風となる。
 国の研究機関が開発し、長野や岡山などブドウの主要産出県を中心に栽培されているシャインマスカットは中国に流出。現地の栽培面積は日本の約30倍に急拡大した。農水省の試算によると、本来なら得られたはずの権利使用料は年間100億円を超える。
 石川県が開発した高級ブドウ「ルビーロマン」は21年に施行された改正種苗法で海外への持ち出し制限品種に指定されたが、既に韓国へ持ち出され、商標登録されていたことが発覚。現地で育成者権を主張しようにも、国際条約が定める出願期限を過ぎており、泣き寝入りするしかなかった。
 農水省は8日の有識者会議で、育成者権の管理機関に関する中間報告をまとめた。報告書は、新機関が開発者に代わって新品種の無断流出がないか監視するほか、海外で育成者権の取得や商標登録を代行することを盛り込んだ。権利侵害が確認された場合の訴訟の代行も含め、具体的な管理手法や組織形態について協議し、年内に最終報告を公表する。

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