島田防衛次官、退任し参与に 官邸は留任認めず

東京, 7月2日, /AJMEDIA/

 防衛省の島田和久事務次官が1日付で退任した。年末に国家安全保障戦略などの改定を控え、岸信夫防衛相は島田氏の留任を求めたが、首相官邸側が「任期2年」の慣例を主張し認めなかった。岸氏はこれを受け、島田氏を同日付で防衛相政策参与と防衛省顧問に充てた。
 「日本が作る防衛計画に世界中が注目し、期待している。皆さんの力で大いなる成果を出してほしい」。島田氏は1日の離任式で、幹部職員らを前にこう訓示した。
 関係者によると、岸氏の実兄である安倍晋三元首相も、島田氏の交代に反対した。島田氏は、2012年12月から約6年半、首相秘書官として安倍氏に仕え、現在でも関係が深い。
 今回の人事は、防衛費増額をめぐる政府・自民党内の対立が原因との見方がある。安倍氏はかねて、大幅増を求める発言を繰り返してきた。政府が先月閣議決定した経済財政運営の基本指針「骨太の方針」をめぐっても、「国内総生産(GDP)比2%」に言及した上で、「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と明記させた。
 こうした動きに対し、官邸幹部は「一線を退いた人は発言を控えるべきだ」と反発。島田氏を退任させることで、安倍氏をけん制するとともに、安保戦略などの改定論議を、岸田文雄首相の主導で進める狙いがありそうだ。
 省内では、島田氏の続投は既定路線とみられていた。新たに就任した鈴木敦夫次官は、次官級の防衛装備庁長官から異例の横滑りで、今回の交代劇は驚きを持って受け止められた。
 島田、鈴木両氏は1985年に旧防衛庁入りした同期。関係者によると、鈴木氏を次官に充てる人事は、島田氏が自ら決めたという。
 防衛省は新体制の下、安保戦略と防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の改定に臨む。一方、岸氏は引き続き、島田氏を議論に関与させる考えで、年末に向け官邸側との主導権争いが激しくなる可能性もある。

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