対中国、外交努力が不可欠 TPPに巻き込み自制促せ―田中均元外務審議官インタビュー

東京, 2月24日, /AJMEDIA/

 元外務審議官の田中均氏は23日までに、時事通信のインタビューに応じた。中国との関係で日米の利益は完全に一致しないと指摘。中国に覇権主義的な行動を控えさせるためには、多国間による地域経済連携の枠組みに中国を引き込む日本の努力が不可欠と指摘した。主なやりとりは次の通り。
 ―反撃能力(敵基地攻撃能力)保有で日本の抑止力は高まると政府は説明している。
 抑止力を高める結果になるとは思わない。中国などが日本に対して行動を起こさないのは米軍の存在だ。唯一意味があるとすれば、日米安全保障体制を強化することだ。
 ―反撃能力保有で、自衛隊と米軍の関係はどう変わるか。
 自衛隊と米軍では武器の使用基準を定めた交戦規定(ROE)が違う。私が恐れるのは、反撃能力の保有を踏まえ、米軍と共同訓練をしたり、作戦計画を練ったりするときに、自衛隊の極めて制限されたROEでは共同対処ができないと言われることだ。専守防衛を変えろと米国から圧力がかかる可能性もある。
 ―政府は中国への警戒感を隠さない。
 米国は中国を唯一の戦略的競争相手として、中国を抑え込む軍事戦略がある。ところが中国との関係で、日本と米国は利益が完全に一致しているわけではない。日本は中国と隣国同士で、中国との関係をもっと繊細に考えないといけない。安倍政権以降、米国に過度に同調する外交になっている。
 ―台湾有事が現実味を帯びているとの見方も。
 今の中国は経済が極めて深刻な事態で、国際社会の協力がないと立ち行かない。だから中国がリスクを冒すことは考えにくい。もし台湾に攻めた場合、世界から経済制裁を受けることになる。
 ―日本はどうするべきか。
 台湾有事を起こさせないために外交的に何をするのかを考えるべきだ。中国は経済を立て直す必要があるから、環太平洋連携協定(TPP)などに中国を巻き込んでいくことで、中国が乱暴な行動に出ないという状況をつくる努力をするべきではないか。
 日本が中国との関係を進めれば中国への発言権が高まる。中国をより良き存在にしていく役割を日本は担うべきで、反撃能力は相手のエスカレーションを招くだけだ。
 ―日本が防衛費を増額することで、周辺国と軍拡競争を引き起こすことはあり得るか。
 可能性はある。本来、軍備縮小や管理の役割を果たすのが日本の役割ではないか。
 ―日米は南西地域で連携を強化している。
 日米安保体制は沖縄の十分な理解なくして存在できない。米軍が沖縄の海兵隊の体制を変えるのならば、日本は基地の在り方の協議を申し入れるべきだ。

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