安保環境激変、日本は戦略練り直し 中朝ロ「三正面」が現実味―ウクライナ侵攻半年

東京, 8月24日, /AJMEDIA/

 ロシアのウクライナ侵攻は、東アジアの安全保障環境にも大きな変化をもたらした。日本はロシアに加え、覇権主義的な動きを強める中国、核・ミサイル開発を進める北朝鮮を前に、「三正面」(外務省幹部)への対応が現実味を帯びる。民主主義国と専制主義国の対立が激化する中、日本は戦略の練り直しを迫られる。
 ◇あすは東アジア
 「ウクライナはあすの東アジア」。岸田文雄首相がこれまでの国際会議で繰り返し用いたフレーズだ。中国による沖縄県・尖閣諸島周辺での領海侵入や「台湾有事」なども念頭に、東アジアでの不測の事態に対する危機感は強い。
 政府は、年末の国家安全保障戦略など3文書改定で防衛力強化の議論を加速させる。日米同盟の深化、日米とオーストラリア、インド4カ国の枠組み「クアッド」など、同盟国、同志国との連携を強化しつつ、中国やロシアとの向き合い方を再構築する。
 経済安全保障も重視する。中国は経済でも周辺国を威圧。ロシアも液化天然ガス(LNG)供給をめぐり日本に揺さぶりを掛ける。半導体など戦略物資を含むサプライチェーン(供給網)の構築は喫緊の課題で、まずは米国主導の新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を通じ地域の協力を探る。
 ◇反撃力、継戦力が鍵
 防衛力の強化では、政府が保有を検討する「反撃能力」(敵基地攻撃能力)と、長期戦に耐える「継戦能力」確保の取り組みが鍵となりそうだ。宇宙、サイバー、電磁波など新領域分野の体制整備も欠かせない。
 反撃能力をめぐっては、周辺国の弾道ミサイル技術が高度化し、迎撃での対応に限界も指摘される。抑止力維持のため、政府は年内に保有の是非を判断する。防衛省は反撃能力への転用も念頭に、敵の攻撃圏外から撃てる長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」を量産、配備する方針だ。
 戦闘が長引くウクライナは欧米からの軍事物資の供給を受けて抗戦を継続。一方、日本が長期戦を見据えた場合、備蓄は「全然足りていない」(防衛省幹部)とされる。弾薬、燃料の確保や重要施設の耐久性向上も課題だ。
 政府はこれらの裏付けとなる防衛費の増額を目指す。自民党内では「5年以内に国内総生産(GDP)比2%」を求める声が強く、防衛省は2023年度概算要求で金額を明示しない「事項要求」を100件超で調整。年末の予算編成で防衛費が一気に膨張する可能性もある。公明党や野党からは「額ありき」への懸念が出ており、政府は増額幅を慎重に検討する。
 ただ、中国は急激な軍拡を進めており、22年度の国防予算は日本の約5倍。ペロシ米下院議長の台湾訪問に反発して実施した軍事演習でも空母や多数の戦闘機を展開し、その一端を見せつけた。ある日本政府関係者は「中国との物量勝負は限界がある」と語り、対応の難しさを認めた。

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