地域活性化へ高まる期待 物流や観光、活用策探る―三陸道全線開通

東京, 12月19日, /AJMEDIA/

 東日本大震災から10年が過ぎ、東北の被災沿岸部を南北に結ぶ三陸沿岸道路(三陸道)が完成した。人口減少や高齢化が進む中、物流の加速化や観光地のにぎわいへ期待が高まる。沿線自治体などは、三陸道を「地域活性の起爆剤」として活用する戦略を検討している。
 三陸道は震災後のまちづくりと一体で造られた。水産業が盛んな宮城県気仙沼市では、インターチェンジ周辺に加工施設が集積。開通によって首都圏への輸送時間は約5時間50分となり、これまでより約50分短縮した。運送会社の担当者は「品物を早く届けられ、ドライバーの負担も減った」と話す。
 沿岸地域同士の距離も縮まり、県境を越えた仕入れや特産品の出荷も可能に。首都圏などへ水産物を出荷する阿部長商店(気仙沼市)の阿部泰浩社長は、「原材料であるサバやイワシが不漁でも青森や岩手の港から確保しやすくなる」と歓迎。八戸商工会議所の山内隆専務理事は地場産品販売を広く展開できるチャンスととらえ、「商圏が広がる」と期待を寄せる。
 観光面の影響も大きい。沿岸部には震災の教訓を学べる伝承施設や地場産品を扱う商業施設などが増えた。三陸道開通の効果で、滞在できる時間が長くなり周遊エリアは広がると見込まれる。岩手県宮古市で活動する震災伝承ガイドの佐々木純子さんは、首都圏から車で訪れる人が増えたと実感。「今まで来られなかった人も来やすくなる。ここでしか聞けない防災の話をしていきたい」と力を込める。
 一方で、完成した道路の有効活用がこれからの課題。「物流や観光でどのように戦略を立てるかがカギだ」と東北地方整備局の担当者は語る。
 無料区間が長く自由に乗り降りできる点は大きな魅力だ。道の駅を核とした集客や沿線地域を巡る周遊観光に期待を抱く自治体も多い。国と沿線自治体は協議の場を立ち上げ、活用策を探っている。東北観光推進機構の紺野純一専務理事は「自治体が連携して一つのブランドをつくり、人の流れに結び付けることが大事だ」と話している。

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