「異形の緩和」効果不発 遠い物価目標、見えぬ出口―長短金利操作導入から5年

東京, 9月19日, /AJMEDIA/

日銀が長期金利の「0%誘導」を柱とする長短金利操作を2016年9月に導入して21日で5年になる。本来景気動向などを反映して上下する長期金利を、中央銀行が一定の水準に維持する政策は極めて異例だ。ただ、日銀が掲げる2%の物価目標は未達が続く。「異形」の金融緩和の効果は乏しく、政策の出口も見通せない。

 「一段と効果的な金融緩和を推進することができる」。黒田東彦日銀総裁は16年の導入直後の講演でこう強調し、金融政策の限界論に真っ向から反論した。2%の物価目標を2年程度で達成するとの黒田総裁の就任当初のもくろみは頓挫。新たな枠組みは「持久戦」へ事態打開を図る狙いがあった。

 市場で取引される10年物国債の利回りである長期金利を日銀が抑え込み続けたことで、メガバンクなどはより高い利回りが見込める外国債券に資金運用の比重を移し、国内債券市場は活気を失った。株価の下支え効果は一定程度あったが、国内経済全体を刺激し、根強いデフレ圧力を一掃するほどの威力は見られなかった。超低金利は政府に安易な国債増発を促し、財政規律の緩みにつながったとの批判もある。

 29日投開票の自民党総裁選では、立候補者のうち高市早苗前総務相が2%の物価目標実現まで基礎的財政収支の黒字化目標の凍結を主張。一方、河野太郎規制改革担当相は「(物価目標達成は)難しい」と、安倍政権の経済政策アベノミクスと距離を置く。

 市場では新型コロナウイルス感染拡大が収束するまで現在の金融緩和路線は当面継続されるとの受け止めが広がる。ただ、
「(2%の物価目標実現を盛り込んだ)政府・日銀の共同声明は、いずれかの時点で見直される可能性が高い」(BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト)との見方がくすぶる。

 河野担当相、岸田文雄前政調会長が勝利すれば、物価目標の早期実現よりも財政健全化重視に、高市氏の場合は財政拡大方向に声明の文言を書き換えるとの見立てだ。次期政権は23年4月に退任する黒田総裁の後任を選ぶ公算が大きく、今後の政策運営に影響を及ぼしそうだ。

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