EU、天然ガス調達先のアゼルバイジャンと関係悪化 非難決議巡り

東京, 4月11日, /AJMEDIA/

アゼルバイジャンとアルメニアの衝突を巡り、欧州連合(EU)欧州議会がアゼルバイジャンを非難する決議を採択したところ、アゼルバイジャン側が激しく反発し、EUとの関係が悪化している。アゼルバイジャンはEUにとってロシア産天然ガスの代替調達先としての期待が高まっており、EUのエネルギー戦略への影響が懸念される。

 発端は2022年9月、アルメニアとアゼルバイジャンの間で起きた軍事衝突だ。両国間では係争地ナゴルノカラバフの領有を巡り、20年に少なくとも7000人が死亡するなど紛争が続いている。22年9月の軍事衝突は、アゼルバイジャンがアルメニアに攻撃を仕掛けたとみられる。EUはフランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、ギリシャなどのグループで構成する治安維持のための監視団をアルメニア側に派遣し、現在も活動を続けている。

 欧州議会は今年3月15日、アゼルバイジャンに対し、軍事衝突時にアルメニア国民への虐待など人権侵害行為があり、また憲法で保障されている集会の自由が守られておらず、メディアや表現の自由も制限されているとして非難する決議を採択した。

 アゼルバイジャン側は、こうしたEUの動きに反発している。アリエフ大統領は3月18日、EU監視団の活動を「問題を解決するのではなく、凍結させようとする行為だ」と批判。「無意味な調停の努力を拒否する」と述べた。アゼルバイジャン議会内からも、欧州議会の決議に憤慨する声が上がっている。

 両者の関係が悪化する中、影響が懸念されるのがEUのエネルギー戦略だ。ロシアによるウクライナ侵攻前、天然ガス輸入の4割をロシアに依存していたEUは、調達先の多角化を進めている。アゼルバイジャンは有力な天然ガス産出国で、トルコなどを経由する「南ガス回廊」と呼ばれるガスパイプライン群で欧州とつながっている。

 EUの行政執行機関に当たる欧州委員会のフォンデアライエン欧州委員長は22年7月、アゼルバイジャンの首都バクーを訪問。南ガス回廊の容量を27年までに2倍以上に増強し、再生可能エネルギーの分野でも協力関係を深める覚書に調印した。アゼルバイジャンとの協力関係が損なわれれば、欧州内の天然ガス供給の確保に支障が出る。

 一方、アゼルバイジャンにとっても、天然ガス輸出は重要な収入源だ。さらにガスを増産するにはパイプラインやガス田の拡張が必要で、その資金源として欧州からの投資を呼び込みたい思惑がある。このため、両者はいずれは和解に向かうとみられるが、当面は着地点を探る外交上の駆け引きが続きそうだ。

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