IT大手へ締め付け拡大 「アリペイ」上場中止から1年―中国

東京, 11月04日, /AJMEDIA/

 中国電子商取引最大手・アリババ集団傘下の金融会社、アント・グループが新規株式公開(IPO)中止に追い込まれてから1年。IT大手に対する規制強化の発端となり、締め付けは業界全体に拡大した。一方、経済成長をけん引してきたハイテク企業の活力が低下し、景気に悪影響が及ぶとの懸念もくすぶっている。

 中国で広く普及する電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」を手掛けるアントは株式上場を2日後に控えた昨年11月3日、IPOの延期を唐突に公表した。アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が直前の講演で当局を厳しく批判、これに激怒した習近平国家主席が延期を命じたとも伝えられる。馬氏はその後、活動自粛を余儀なくされた。

 アントは上場手続きの再開を目指しているものの、事業構造の見直しを求める当局との協議は難航しており、先行きは見通せない。約340億ドル(約3兆8700億円)の資金調達を計画していた世界最大級の上場案件は宙に浮いた状態が続く。

 アントに次いで親会社のアリババも締め付けの標的となり、今年4月には独占禁止法違反で、同国では過去最高となる182億元(約3200億円)の罰金を科された。対象は、アリババ関連だけにとどまらず、オンラインゲームや配車サービス、オンライン学習塾などにも飛び火。そのたびに関連業界の株価が急落した。

 当局が強硬姿勢に転じた背景には、経済格差の是正に本腰を入れたい習指導部が掲げる「共同富裕」がある。IT業界は従来、規制が極めて緩やかで、インターネット上で商品やサービスの販売市場を運営する「プラットフォーマー」が巨額の利益を上げてきた。当局は締め付けを通じ、「独り勝ち」を抑えたい考えとみられる。

 IT大手に対する規制強化は世界的な流れだが、中国の場合、担い手であるアリババなど民間企業を当局の影響下に置くことが真の狙いとの見方が根強い。一方、過度の締め付けには「企業の意欲をそぎ、経済の停滞を招く」(エコノミスト)との懸念が広がる。政府が掲げる科学技術の自立が遅れる恐れもある。

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