CO2貯留、事業化へ加速 政府支援、月内に工程表

東京, 1月15日, /AJMEDIA/

 工場や発電所から排出された二酸化炭素(CO2)を回収し、地中深くに貯留する技術「CCS」の実証実験が国内でも動き始めた。経済産業省は、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする政府目標の実現にはCCSの活用が不可欠と位置付け、月内にも支援策などをまとめた工程表を策定する予定。23年度の法制化も視野に入れており、30年までの事業化へ官民挙げた取り組みが加速する。
 国際エネルギー機関(IEA)は21年にまとめた報告書で、50年に脱炭素化を達成するためには、世界で年間76億トンのCO2回収が必要と分析。経産省は、日本では最大2.4億トン、化石燃料の燃焼による排出量(21年度9.8億トン)の4分の1に相当するCO2貯留が必要だと試算する。
 かつて「炭鉱の町」として栄えた北海道三笠市では、貯留先として廃鉱を活用したCCSの実証実験が進む。同市は昨年9月までに、CO2を水に混ぜた「マイクロバブル水」を、泥状の物体とともに地下約400メートルの採掘跡に流し込んで固定化することに成功した。閉山後に残された石炭から水素の製造を目指しており、その過程で出たCO2をCCSで貯留する予定。同市担当者は「産炭地の復興につなげたい」と意気込む。
 資源開発大手INPEX(インペックス)も25年、新潟県柏崎市で実証実験を開始する。天然ガスから水素とアンモニアを製造した際に生じるCO2をガス田に貯留する計画だ。
 事業化に向けた課題の一つは、CCSには石油など地下鉱物の採掘活動を規定する鉱業法のような法律がないこと。経産省は早ければ23年秋の臨時国会に、貯留したCO2の管理責任などを明確化する法案を提出する。
 コスト低減も課題だ。経産省によると、2.4億トンのCO2を貯留するには深さ1000~3000メートル程度の井戸が480本必要。ただ、試掘費用は1本当たり50億~80億円掛かるとされる。
 三菱総合研究所の野本哲也主任研究員は、民間企業のCCS参入を促すには、収益化の仕組みを整えた上で、「事業の立ち上がり時期の支援が必要だ」と指摘する。経産省は法制化とともに、先進的なCCS事業を行う企業に対し初期投資や操業費用を全面的に支援する方針だ。

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