疲弊する酪農経営 生産コスト上昇、減産で圧迫―相次ぐ離農者・今後に懸念

東京, 12月18日, /AJMEDIA/

 酪農経営が厳しさを増している。ロシアによるウクライナ侵攻を背景に乳牛の餌となる配合飼料などの価格が高騰して生産コストが上昇する一方、生乳の供給過多抑制に向けた減産で経営体力が奪われ、生産者の離農に歯止めがかからない。酪農が盛んな北海道でも生産者団体が来年の減産を決めるなど、今後の酪農経営への影響を懸念する声が出ている。
 農林水産省の畜産統計によると、今年2月1日現在の酪農家戸数は前年比4.3%減の1万3300戸。ここ20年ほどは毎年4%前後減少する傾向にある。このうち生乳生産量の5割超を占める北海道は2.8%減の5560戸だった。
 北海道の関係者は「今年は既に200戸近い生産者が離農したか、離農を決めている状態だ」と声を潜める。餌代の高騰や生産抑制に加え、バター不足解消による生産増強で設備投資した際の借金が大きな負担となり、経営を圧迫しているという。
 こうした状況を踏まえ、生産者団体と乳業メーカーが交渉。11月から出荷する牛乳・乳製品向けの生乳について、卸売価格を1キロ当たり10円引き上げた。
 一方で、北海道の生産量の8割を占めるバターやチーズなどの加工向けは、年内の合意を目指して交渉が続く。政府はこの間、飼料代の補填(ほてん)や減産支援を決定。来年度の加工原料乳の生産者に対する交付金は、これまで最高の2008年度に次ぐ引き上げ幅とするなど、生産基盤の弱体化防止へ下支えしている。
 これら支援策などにもかかわらず、北海道の酪農経営者からは「来年も減産方針が示されており、経営が持つのか不安だ」と悲観的な見方がある。周囲には「資金繰りの悪化や後継者が見つからないことで、見切りをつける農家がいる」という。
 だが、乳業メーカーの幹部は「国内需要の3割強は輸入が占めているため、チーズなどで国産生乳の需要拡大の可能性は大きい」と指摘。輸出に関しても「東アジア地域で日本ブランドの評価は極めて高い」と期待は小さくない。ただ、離農が進むと生産者が減り、こうした反転攻勢の芽を摘む恐れがある。乳業界にとっては、今後に向けてまさに踏ん張りどころとなる。

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