海洋放出に根強い反対 風評被害に懸念―福島第1処理水―政府・東電、対応急ぐ

東京, 4月13日, /AJMEDIA

 東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む処理水について、政府が海洋放出の方針を決定して13日で1年。地元漁業者らが風評被害を懸念して反対し続ける一方、政府・東電は風評対策などを講じて来年春ごろの放出開始へ対応を急ぐ。前提となる関係者の理解は十分得られておらず、先行きには不透明感が漂う。
 東電ホールディングスは昨年12月、原子力規制委員会に放出計画を申請した。規制委の認可に加え、地元自治体の事前了解を得た後、東電は海洋放出のための工事を本格化させる。処理水をためておくタンクが満杯になるとされる来年春ごろまでの完成を目指す考えだ。
 処理水は海水によりトリチウム濃度を国の基準値の40分の1未満に薄め、海底トンネルを通じ原発から約1キロの沖合に流す。環境への影響の監視に国際原子力機関(IAEA)の協力を得ることなどで、風評による影響を軽減させる狙いだ。政府も、風評被害抑制へ行動計画を策定するなど対策を進めている。
 政府・東電の動きに対し、地元漁業者らは強く反発している。政府と東電は2015年、漁業者と「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と約束。今月5日には、萩生田光一経済産業相が全国漁業協同組合連合会の岸宏会長らと会談し、この約束を順守する考えを示した。岸氏は萩生田氏に「放出には断固反対で、いささかも変わらない」と断言。岸氏は同日、岸田文雄首相とも面談し、反対の考えを伝えた。
 原発敷地内のタンクは、廃炉作業に必要とされる場所にも置かれている。政府・東電は、東日本大震災からの復興のため処理水の処分は避けて通れないとして、引き続き関係者の理解を求めていく方針だ。ただ、漁業者らとの溝は深く、中国など周辺国も反発を強めている。計画通りに海洋放出できるかは見通せていない。

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