水産物のトリチウム分析開始 風評被害防止へデータ蓄積―水産庁

東京, 3月5日, /AJMEDIA/

東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出に先立ち、水産庁は水産物に含まれるトリチウムの測定を2022年6月に開始した。今年2月中旬時点で、福島県沖を中心に東日本地域の太平洋で採取された167検体すべてで、食べて問題となる濃度は検出されていない。放出の前と後で客観的なデータを示し続けていくことで風評被害の防止を目指す。
水産庁から委託を受けて検査を行っている海洋生物環境研究所の中央研究所(千葉県御宿町)を1月30日に訪ねた。午前9時すぎ、研究所に試料となるヒトエグサ(青ノリ)、ウニ、ワカメが届くと、職員が手際よく産地と種名ごとに振り分けていた。
 水産物のトリチウム濃度測定では、試料から水分を正しく抽出することが必要となる。トリチウムは水素の仲間で、大気中の水蒸気や海水など自然界にも存在する。大気中の水蒸気が混入したり、水分が蒸発して濃度が変化したりしないよう細心の注意が欠かせない。
 試料は、必要に応じてミンチ状に細かく刻み、1検体200グラム程度ずつ透明な袋に入れて密閉し、平らにのばして急速冷凍する。次に、凍らせた試料を乾燥させ、抽出した水分を再び凍結。こうして回収した水分をゆっくり解凍して水に戻し、不純物を取り除く。これに試薬を混ぜて1週間程度寝かせると、ようやく測定の準備が整う。
 水産物の到着から分析結果が出るまで1カ月~1カ月半程度を要するという。手間も時間もかかる地道な作業だが、主任研究員の山田裕氏は「正しい検査を行い、正しい情報を発信し続けることが風評被害を減らすことにつながる」と話した。
 水産庁は、放出開始が計画される23年度は検体の数を増やし、北海道から千葉県の太平洋沿岸に水揚げされる水産物を分析していく。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts