正常化議論、続く封印 「悪い円安」に懸念―日銀異次元緩和9年

東京, 4月5日, /AJMEDIA/

 日銀が国債を大量に購入して資金供給する「異次元」の金融緩和を開始してから4日で9年。インフレが進行する欧米は金融政策の引き締めに動く一方、日銀は正常化に向けた議論を封印した状況が続く。政官財に染み付いた「円高恐怖症」は薄れ、逆に内外金利差の拡大が原油などの輸入価格をさらに押し上げる「悪い円安」への懸念が拡大。大規模緩和を取り巻く環境は大きく変化した。
 「利上げの必要はまったくないし、金利差が拡大したら直ちに円安になることもない」。日銀の黒田東彦総裁は3月18日の記者会見で、欧米に追随した利上げを否定。物価を押し上げる円安進行についても「経済にプラスに作用している構図に変わりはない」と釈明に追われた。
 黒田総裁が2013年に大規模緩和に踏み切った大きな要因は円高対策だ。円相場は11年秋、戦後最高値となる1ドル=75円台まで上昇。デフレの元凶である円高を放置し、輸出企業を中心に国内経済に打撃を与えたとして、当時の日銀の金融政策に批判が集中したという経緯がある。
 異次元緩和の後も、黒田総裁は2%の物価目標の実現を目指し、マイナス金利政策や長期金利を0%に操作する異例の緩和策を繰り出してきた。先月には、長期金利の上昇を抑えるため、国債を特定の利回りで無制限に複数日にわたり買い入れる「連続指し値オペ」を初めて実施。円相場は海外市場で一時125円台まで円安が加速した。
 しかし、円安となっても、企業の海外展開が進んだため、輸出の押し上げ効果は限定的。コロナ禍でインバウンド需要も見込めず、恩恵を感じにくくなっている。
 さらに、ロシアがウクライナを侵攻する中、経済界からは、円安に関し「国力の弱さや、地政学的危機での強靱(きょうじん)性の低さが背景にあるとすれば、慢性的に悪い影響が及ぶ可能性がある」(桜田謙悟経済同友会代表幹事)と警戒する声も出始めた。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts